宗教信条と倫理観 医療に関連して

宗教信条と倫理観 医療に関連して

エホバの証人は命を大切にしており,道理にかなうあらゆる方法で命を長らえようとします。良質の医療を望み,ほとんどの医療処置を受け入れます。

中絶

望まない子供を産まないために人為的に流産を起こすことは,人の命を故意に絶つ行為であり,エホバの証人は受け入れません。出産の時点で母親と子供のどちらの命を救うか選択しなければならない場合は,親あるいは法的な保護者が決定を下します。

アルコール飲料,麻薬,薬剤

聖書は,アルコール飲料の適度な飲用を禁じてはいません。(申命記 14:26。エフェソス 5:18。テモテ第一 5:23)節度を保つべきことと,人の命や知的能力を大切にすべきことを教えています。ですから,薬物の乱用(喫煙や気晴らしのための薬物の使用など)は容認されません。医師の監督下の医療目的での薬剤の使用(極度の痛みを抑えるための麻薬の使用など)は,各自が決定すべき事柄です。

解剖

死因を特定するために解剖が妥当かどうかは,しかるべき親族が判断します。

自己血輸血( を参照)

エホバの証人は,術前自己血貯血を受け入れません。とはいえ,血液希釈,血液回収,人工心肺,血液透析といった自己血輸血の手法については,各自が決定します。ポンプは無血性溶液を用いてプライミングします。硬膜外自家血注入法(ブラッドパッチ),血漿アフェレーシス,血球標識,自己血血小板ゲルを受け入れる患者もいます。医療提供者は,それぞれの患者がどんな製剤や手法を受け入れるかを事前に確認しておくことが大切です。

   同種血および自己血に関するエホバの証人の考え方

避妊

聖書は避妊を禁じてはいません。しかるべき方法で家族計画を行うかどうかは,夫婦が自分たちで責任をもって決定します。とはいえエホバの証人は,人工妊娠中絶は行いません。

血液分画( を参照)

エホバの証人は,血液の主要成分に由来する分画(アルブミン,免疫グロブリン,凝固因子,ヘモグロビン溶液など)の使用を聖書は必ずしも禁じてはいない,と理解しています。医療提供者は,それぞれの患者がどんな製剤や手法を受け入れるかを事前に確認しておくことが大切です。(「 免疫グロブリンと血清」および「 輸血の代替療法」を参照。)

ご存じでしたか

血液の主要成分に由来する分画の使用について,エホバの証人の立場にはかなりの幅があります。臨床医は,個々の患者の選択を事前に確認しておくことが大切です。

輸血( を参照)

エホバの証人は,以下のような聖書の記述を考慮して,輸血を受け入れません。「血を含む肉を食べてはならない。血は命だからである」。(創世記 9:3,4)「その血を注ぎ出して土で覆わなければならない」。(レビ記 17:13,14)「性的不道徳と絞め殺された動物と血を避ける」。(使徒 15:19,20)これらは医学用語で述べられてはいませんが,エホバの証人は,これらの言葉は全血,赤血球,白血球,血小板,血漿の輸血を禁じている,と考えています。エホバの証人の患者は,輸血の代替療法を用いる治療を要望します。(「 輸血の代替療法」を参照。)

ご存じでしたか

エホバの証人は信仰治療を行いません。

骨髄移植

聖書は骨髄を血液と同等のものとは見なしていません。ですから,骨髄移植を受け入れるかどうかは各自が決定する事柄です。(イザヤ 25:6

子供の訓練,虐待,育児放棄

子供の虐待や育児放棄はいかなる場合も正当化できません。教育としての子供の訓練や愛に基づく矯正は,幼い子供の人格形成に欠かせません。

割礼

クリスチャンの歴史の初期である西暦1世紀から,割礼は宗教的な要求事項ではなくなりました。(コリント第一 7:19)ですから,男の子に割礼を受けさせるかどうかは親が決める事柄です。女の子に女性性器切除を受けさせるのは残酷で不必要な習慣であると言えます。

 意思決定とインフォームド・チョイス

エホバの証人は,必要な場合,積極的に医療を受けようとします。多くの裁判所は,患者が医療上の意思決定において体に関する自己決定の基本的権利を有することを認めており,医療上のインフォームド・コンセントあるいはインフォームド・チョイスの原則に基づく患者の自律性を保護しています。国によっては,成熟した未成年者についても同じことが言えます。

患者(あるいは未成年者の親や保護者)は,きちんと理解した上で医療上の決断を下せるよう,診断や予後や推薦される治療法について十分な情報を与えられるべきです。親は,未成年の子供の代わりにそうした決定を下す当然の権利および法的権利を有しています。

食物に関する規定と信条

エホバの証人は,血や血抜きしていない肉は食べません。(使徒 15:20,28,29)聖書が禁じているこうしたもののほかには,食物に関してグループとしてのエホバの証人に制限はありません。

安楽死

 延命と死ぬ権利: リビングウィルまたは事前指示書」を参照。

 免疫グロブリンと血清

エホバの証人は,血液分画から作られた製剤の使用を聖書は必ずしも禁じてはいない,と理解しています。血液分画から作られた免疫グロブリンや血清を受け入れるかどうかは,各自が決定します。

臓器提供/移植

聖書は血液の摂取を明確に禁じていますが,組織や骨を取り入れることをはっきり禁じる命令は聖書中にありません。ですから,臓器移植を受け入れるか,臓器提供を行うかは,各自が下す医療上の決定です。

パストラルケア

エホバの証人は,病気あるいは入院中の仲間に精神的な慰めと実際的な援助を差し伸べます。多くの大都市には,資格ある奉仕者で構成される患者訪問グループが設けられています。

血漿アフェレーシス

代用血漿(例: 人工の膠質液)が用いられる場合,血漿アフェレーシスの使用は,エホバの証人各自が個人的に決定する事柄です。エホバの証人は,同種血の血漿は受け入れません。

 延命と死ぬ権利: リビングウィルまたは事前指示書

命は神聖なものです。ですから,命の維持と延命のために,道理にかなった人道的な努力を払うべきです。しかし,度を越した方法や,複雑,悲惨,高額な方法を用いて,死期の迫っている人を生かせておくことを,聖書は要求していません。そのような方法を用いても死への過程が引き延ばされるだけである,あるいは患者は有意義な生活を送れるわけではない,という点で担当医たちの意見が一致する場合があります。書面あるいは口頭による患者の明確な指示を尊重すべきです。

宗教といやし(信仰治療)

エホバの証人は神への信仰を抱いていますが,信仰治療は行いません。

宗教的な秘跡(サクラメント),儀式,慣行

エホバの証人は,病気の人や死期の迫っている人に対して特別な儀式を行ったりはしません。病気の人に医学的な支援や精神面の世話が受けられるようにします。

ご存じでしたか

多くの国で,エホバの証人は,万一当人が判断能力を失った場合に決定を下す,または相談を受ける法的権限を持つ代理人を指名しています。

生殖技術

妻の卵子と夫の精子を使った体外受精に関しては,それぞれの夫婦が個人として決定を下します。一方,夫婦でない男女から精子と卵子を採取する体外受精は受け入れません。(レビ記 18:20。ヘブライ 13:4)代理母出産も受け入れません。

幹細胞移植

エホバの証人は,胎芽の命を犠牲にして得た幹細胞は受け入れません。しかし,自分や他の人の血液から採取した幹細胞の場合,幹細胞とともに血液成分が意図的に採取・貯蔵・再注入されるのでないなら,その幹細胞を受け入れるかどうかは各患者が決定します。

代理の意思決定者

多くの国で,エホバの証人の患者各人は,自分の状況および法律の規定に基づき,判断能力を失った場合の代理の意思決定者を指名するかもしれません。患者が事前指示書や医療上の永続的委任状で医療代理人を指定しているなら,判断能力を失った患者の代わりに決定を下す代理人の権限は尊重されるべきです。(「 医療に関する永続的委任状」および「 意思決定とインフォームド・チョイス」を参照。)

ご存じでしたか

エホバの証人の多くは,血液回収や血液希釈などの自己血管理手法を受け入れます。

標識(血球ラベリング)

エホバの証人の中には,さまざまな診断検査のために自分の血液を幾らか採取して薬剤で標識を付けることに同意する人もいます。

  輸血の代替療法

治療中の輸血を避けるには,出血と貧血を制御するストラテジーを系統的に用いる必要があります。こうした輸血の代替ストラテジーでは,薬剤・機器・内科的および外科的手法を適切に組み合わせて,失血を抑え,患者自身の血液産生を促進します。協働的チームが複数の方法を用いて輸血を避けるこのアプローチは,無輸血治療,血液温存法,患者の血液管理プログラムなどと呼ばれることがあります。 a

ワクチン

エホバの証人はワクチン接種に反対しておらず,個人が判断することと見なします。多くのエホバの証人はワクチンを受けることにしています。

詳しくは

エホバの証人は,2000以上の医療機関連絡委員会(HLC)で構成される世界的なネットワークを有しています。このネットワークは,無輸血治療ストラテジーの信頼できる情報を提供し,エホバの証人の患者が医療を受けられるよう援助します。

最寄りのHLC代表者の連絡先はwww.jw.org/medicalを開き,「地元の代表者と連絡をお取りください」を選択すると表示されます。

エホバの証人のホスピタル・インフォメーション・サービス

国際オフィス +1 718.560.4700 | HIS@jw.org

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a エホバの証人の医療機関連絡委員会は,輸血の代替療法に関する情報を医師に提供したり,無輸血での患者治療の経験を積んだ医師との相談を手配したりします。この委員会は世界中の多くの大都市で活動しています。