私わたしは小ちいさな農のう場じょうで育そだちました。父ちち，母はは，兄あに，姉あね，弟おとうと，妹いもうとと一いっ緒しょに住すんでいて，鳥とりや豚ぶたや牛うしを飼かっていました。食たべる物ものはほとんど自じ分ぶんたちの農のう場じょうで賄まかなっていました。農のう場じょうでの生せい活かつは大たい変へんでしたが，みんな幸しあわせでした。

 私わたしたちはメソジスト教きょう会かいに通かよっていました。父ちちは歌うたが上じょう手ずだったので，聖せい歌か隊たいに入はいっていて，周しゅう辺へんの他たの教きょう会かいにも歌うたいに行いっていました。私わたしもよく付ついていきました。教きょう会かいは石いし造づくりの大おおきな建たて物もので，冬ふゆはとても寒さむかったです。教きょう会かいに入はいると，父ちちは前まえに立たって歌うたっていました。前まえの方ほうの席せきは有ゆう力りょく者しゃしか座すわることができなかったので，私わたしは後うしろの方ほうに座すわるしかありませんでした。それでも父ちちの歌うたを聞きけてうれしく思おもっていました。

 父ちち方かたの祖そ母ぼ（私わたしはおばあちゃまと呼よんでいた）は毎まい週しゅう日にち曜よう日び，私わたしたちの家いえに来きてくれていました。私わたしが16歳さいの時とき，悲かなしいことに祖そ母ぼは亡なくなりました。本ほん当とうにショックでした。私わたしは，祖そ母ぼがどこにいるのか，また会あえるのか知しりたいと思おもいました。それで，死し者しゃと話はなせると言いわれていた霊れい媒ばい師しの所ところに何なん度どか行いきました。霊れい媒ばい師しの家いえは寒さむくて薄うす汚ぎたなくて不ぶ気き味みに感かんじました。私わたしが知しりたかったのは，おばあちゃまがどこにいるのかということだけだったのに，霊れい媒ばい師しは答こたえられませんでした。

 父ちちの親しん戚せきの1人ひとりがエホバの証しょう人にんだったんですが，数すう年ねん後ごのある日ひ，その人ひとが私わたしを集しゅう会かいに誘さそってくれました。エホバの証しょう人にんは変かわった教おしえを信しんじているといううわさを聞きいていましたが，それでも行いってみることにしました。集しゅう会かいで親しん切せつな女じょ性せいが「私わたしと聖せい書しょを勉べん強きょうしてみない？」と聞きいてきました。これが，私わたしが真しん理りの道みちを歩あゆみ始はじめるきっかけになりました。母ははからエホバの証しょう人にんの聖せい書しょは訳やくが不ふ正せい確かくだと聞きいていたので，初はじめは「ジェームズ王おう欽きん定てい訳やく（きんていやく）」聖せい書しょを使つかっていました。でもすぐに，母ははから聞きいていたことは事じ実じつとは違ちがっていることに気き付づきました。

 私わたしは聖せい書しょに書かかれていることを知しって感かん動どうしました。特とくに，おばあちゃまが今いまは眠ねむっているような状じょう態たいで，復ふっ活かつした時ときにまた会あえるということが分わかってうれしかったです。 a 学まなんでいくにつれて，私わたしは神かみや聖せい書しょについてほとんど何なにも知しらないということに気きが付つきました。長なが年ねん教きょう会かいに通かよっていた父ちちも，神かみについてほとんど何なにも知しりませんでした。私わたしたちは，「偉い大だいなエホバよ，汝なんじ我われを導みちびきたまえ」という賛さん美び歌かを何なん度ども歌うたっていたのに，誰だれについて歌うたっているのか全まったく分わかっていませんでした。

結けっ婚こんと反はん対たい

 当とう時じ付つき合あっていたイアンも，私わたしが学まなんでいることに関かん心しんを持もって聖せい書しょを学まなび始はじめました。学まなんだことを生せい活かつに当あてはめるようになり，たばこもやめました。私わたしたちは1971年ねん9月がつに結けっ婚こんしました。でもそのすぐ後あと，イアンの母ははが突とつ然ぜん亡なくなって，信しん仰こうが試ためされることが起おきました。家か族ぞくや親しん戚せき，親したしい友ゆう人じんたちが，お葬そう式しきに関かん連れんしたいろいろな集あつまりや行ぎょう事じに参さん加かするよう言いってきました。そういう場ばでは，参さん加か者しゃの多おおくがたばこを吸すったり，たくさんお酒さけを飲のんだりしていました。イアンはそれを見みて，自じ分ぶんが以い前ぜん行おこなっていた習しゅう慣かんに戻もどってしまいたくなりました。

 残ざん念ねんなことに，イアンはだんだんやる気きを失うしない，学まなんだことを当あてはめるのを難むずかしく感かんじるようになりました。そして，聖せい書しょの勉べん強きょうや集しゅう会かいを休やすみがちになりました。私わたしは聖せい書しょの勉べん強きょうや集しゅう会かいや伝でん道どうが大だい好すきでした。それで1972年ねん3月がつ9日かにバプテスマを受うけました。イアンも見みに来きてくれました。でもイアンは徐じょ々じょに，私わたしがエホバの証しょう人にんであることに反はん対たいするようになりました。出しゅっ版ぱん物ぶつを見みるのも嫌いやがりました。また，伝でん道どうしないでほしいとも言いいました。さらに，地じ元もとのパブで開ひらかれるクリスマスや誕たん生じょう日びのパーティーに一いっ緒しょに行いくよう強つよく言いってきました。家か族ぞくの頭かしらに敬けい意いを示しめすために一いっ緒しょに行いくこともありましたが，聖せい書しょの教おしえに反はんしたことをしないように気きを付つけました。 b エホバを悲かなしませ，自じ分ぶんの良りょう心しんが痛いたむことをしないよう，トイレに行いって何なん度ども祈いのりました。エホバの助たすけをいつも感かんじました。

 私わたしたちにはフィリップ，ナイジェル，アンドリューという3人にんの息子むすこがいました。夫おっとは長ちょう距きょ離りトラックのドライバーだったので，週しゅうのほとんどは家いえにいませんでした。良よい妻つまでいるように頑がん張ばりつつ，エホバにも一いっ生しょう懸けん命めい仕つかえるよう努ど力りょくしていました。夫おっとが留る守すの時ときに伝でん道どうに行いき，週しゅう末まつは夫おっとと一いっ緒しょに時じ間かんを過すごしました。子こどもたちの前まえで夫おっとのことを悪わるく言いわないようにも心こころ掛がけていました。

 会かい衆しゅうにはたくさん友とも達だちがいたので，両りょう親しんの所ところに行いく時ときには，その幾いく人にんかに一いっ緒しょに行いってもらいました。両りょう親しんはだんだんとその兄きょう弟だい姉し妹まいたちのことが好すきになりました。会かい衆しゅうの中なかで慕したわれていた兄きょう弟だいが亡なくなった時とき，母ははは王おう国こく会かい館かんで行おこなわれた追つい悼とう式しきに出しゅっ席せきしました。その後ご間まもなく，父ちち，母はは，兄あにのスタンリーと妻つまのアブリルが聖せい書しょの勉べん強きょうを始はじめ，バプテスマを受うけました。

 スタンリーとアブリルには息子むすこと娘むすめがいました。私わたしはアブリルと一いっ緒しょに，子こどもたちを連つれてよく伝でん道どうに行いきました。2人ふたりとも車くるまを持もっていなかったので，ベビーカーを押おしながら何なんキロも歩あるいて伝でん道どうしました。とても幸しあわせな時じ間かんでした。ベビーカーの中なかにはアンドリュー，上うえにはナイジェルが乗のり，横よこにはフィリップが並ならんで歩あるいてベビーカーを押おしていました。

子こ育そだて

 その後ご，2人ふたりの娘むすめキャロラインとデビーが生うまれました。私わたしは，子こどもたちがエホバのことをよく知しって，エホバに仕つかえるようになることを目もく標ひょうにしていました。それで，聖せい書しょに書かかれている親おやへのアドバイスをできるだけ当あてはめたいと思おもいました。私わたしはエホバに献けん身しんしていたので，エホバに喜よろこばれる行こう動どうをすることによって，自じ分ぶんが献けん身しんの誓ちかいを守まもっていることを子こどもたちに分わかってもらいたいと思おもっていました。

 心こころに留とめていた聖せい句くの1つは，「悪わるい交こう友ゆうは良よい習しゅう慣かんを台だい無なしにします」というコリント第だい一いち15章しょう33節せつです。ある姉し妹まいが大たい会かいで，子こどもたちには，放ほう課か後ご，学がっ校こうの友とも達だちとは遊あそばないようにと教おしえているというのを聞ききました。私わたしもそうしようと思おもいましたが，とても大たい変へんでした。時とき々どき息子むすこたちはこっそり家いえを抜ぬけ出だして，学がっ校こうの友とも達だちとサッカーをしに行いってしまったからです。友とも達だちの多おおくはいい子こたちでしたが，エホバに仕つかえていない子こたちです。それは言こと葉ば遣づかいや態たい度どに表あらわれていました。

 ある時とき，放ほう課か後ごサッカーをしたいなら私わたしが一いっ緒しょにやってあげると息子むすこたちに言いいました。でもそれは良よいアイデアではありませんでした。私わたしがサッカーを上じょう手ずにできなかったからです。それでも，遊あそぶ友とも達だちをちゃんと選えらぶことの大たい切せつさを分わかってもらえるよう，諦あきらめずに教おしえ続つづけました。そうしているうちに，エホバに仕つかえていない子こたちと一いっ緒しょじゃなくても，息子むすこたちは楽たのしめるようになっていきました。

 ほかにも，ヨハネ第だい一いち2章しょう17節せつの聖せい句くを心こころに留とめていました。「世よも，世よの欲よく望ぼうも，過すぎ去さりつつあります。一いっ方ぽう，神かみの望のぞむことを行おこなう人ひとは永えい遠えんに生いきます」という聖せい句くです。サタンの支し配はいする世せ界かいは間まもなく終おわります。それで，子こどもたちが永えい遠えんにエホバとの絆きずなを大たい切せつにしていけるよう助たすけることを目もく標ひょうにしていました。問もん題だいが起おきた時ときは，どんな小ちいさなことでもエホバに祈いのったので，いつも聖せい書しょからアドバイスを見みつけることができました。子こどもたちに聖せい書しょを見みせて教おしえると，私わたしではなくエホバから言いわれていることだと分わかってもらえました。言こと葉ばと行おこないで手て本ほんを示しめすようにしたことは，良よい結けっ果かにつながりました。例たとえば，子こどもたちは小ちいさい頃ころからそれぞれ自じ分ぶんの再さい訪ほう問もんを持もっていて，それが励はげみになって伝でん道どうを楽たのしめていました。

 また，集しゅう会かいに出しゅっ席せきすることはとても大たい切せつなことだと感かんじていました。ある時とき，週しゅう日じつの集しゅう会かい中ちゅうに子こどもたちが疲つかれていることに気き付づきました。それで，夜よるに集しゅう会かいがある日ひには，子こどもたちを学がっ校こうに迎むかえに行いき，簡かん単たんな食しょく事じをさせ，一いっ緒しょに昼ひる寝ねをするようにしました。これで問もん題だい解かい決けつです！ 誰だれかの体たい調ちょうが悪わるくて王おう国こく会かい館かんに行いけない時ときだけ集しゅう会かいを休やすみました。そういう時ときは，家いえで一いっ緒しょに集しゅう会かいのプログラムを話はなし合あいました。テレビはそれが終おわってから見みるようにしていました。イアンが予よ想そう外がいの時じ間かんに家いえに帰かえってくることもありましたが，そんな時ときは急いそいで出しゅっ版ぱん物ぶつを隠かくしてテレビをつけました。

 家か族ぞくの崇すう拝はいも大たい切せつにしていました。時とき々どき，ベテルについて話はなしました。ベテルのどの部ぶ門もんで働はたらきたいか，子こどもたちと一いっ緒しょに話はなし合あいました。

開かい拓たく奉ほう仕しを目もく標ひょうにする

 長ちょう男なんのフィリップは，16歳さいの時ときに車くるまの修しゅう理りをする全ぜん時じ間かんの仕し事ごとをしないかと声こえを掛かけられました。同どう時じにパートタイムで窓まど掃そう除じの仕し事ごとをするという選せん択たく肢しもありました。でも，フィリップは窓まど掃そう除じの仕し事ごとはしたくないと言いいました。フルタイムの仕し事ごとをすれば，家か計けいを助たすけることができると思おもっていたみたいです。それで私わたしは，家か計けいを支ささえるのは父ちち親おやの責せき任にんなので，あなたは心しん配ぱいしなくていいと話はなしました。そして，これまで生せい活かつするお金かねに困こまったことはないことを伝つたえました。パートタイムの仕し事ごとをすれば，開かい拓たく奉ほう仕しを今いますぐにでも始はじめられるということも話はなしました。

 フィリップは学がっ校こうを卒そつ業ぎょうするとすぐ正せい規き開かい拓たく奉ほう仕しを始はじめました。そして私わたしも補ほ助じょ開かい拓たく奉ほう仕しを始はじめました。次じ男なんのナイジェルも学がっ校こうを卒そつ業ぎょうした後あと，開かい拓たく奉ほう仕しを始はじめ，私わたしも正せい規き開かい拓たく奉ほう仕しを申もうし込こみました。1年ねんだけでもできたらと思おもったんです。息子むすこたちの開かい拓たく奉ほう仕しをサポートして一いっ緒しょに伝でん道どうできますし，開かい拓たく者しゃ学がっ校こうにも行いけると思おもったからです。その後ご，ナイジェルと一いっ緒しょに開かい拓たく者しゃ学がっ校こうに出しゅっ席せきすることができました。

 始はじめた時ときから開かい拓たく奉ほう仕しが大だい好すきでしたし，このようにしてエホバにお仕つかえすることが子こどもたちにとって良よい手て本ほんになると感かんじてきました。エホバのおかげで，これまで35年ねん間かん開かい拓たく奉ほう仕しができています。私わたしが開かい拓たく奉ほう仕しをしていると知しったら，イアンはきっとやめさせようとしたと思おもいます。それで，週しゅうの半なかばのイアンが仕し事ごとに行おこなっている間あいだにいつも奉ほう仕しするようにして，イアンが家いえにいる時ときは一いっ緒しょに過すごすようにしました。

 その後ごナイジェルはベテル奉ほう仕しを申もうし込こみ，ベテルに行いけることになりました。ナイジェルはそこで，良よい感かん化かを与あたえてくれる人ひとたちと過すごしたり，良よいトレーニングを受うけたりして，クリスチャンとして成せい長ちょうできたと感かんじたようです。フィリップとアンドリューは宣せん教きょう訓くん練れん学がっ校こう（MTS）に行いきました。 c 私わたしから見みればまだ子こどもだと思おもっていたのに，MTSに行いって成せい長ちょうして帰かえってきました。（ペテロ第だい一いち 5:10）エホバに教おしえていただけるこうした学がっ校こう全すべては本ほん当とうに素す晴ばらしいです。息子むすこたちをトレーニングしてくれたエホバと組そ織しきに心こころから感かん謝しゃしています。

乗のり越こえてきたほかの問もん題だい

 何なん年ねんもの間あいだに，いろいろ大たい変へんなことがありました。中なかでも大たい変へんだったのは，夫おっとが不ふ倫りんしたことです。結けっ婚こんして33年ねんたったころ，夫おっとが家いえを出でて行いき，ほかの人ひとと住すむようになりました。もう1つ大たい変へんだったのは，両りょう親しんが年としを取とっていくのを見みることでした。悲かなしいことに，父ちちは1997年ねん3月がつに亡なくなりました。父ちちがいなくなって，母ははは独ひとりぼっちになり，本ほん当とうにさみしく感かんじていました。しかも母ははは運うん転てん免めん許きょを持もっていませんでした。それで母ははによく電でん話わして，「ドライブがてら，一いっ緒しょに再さい訪ほう問もんに行いかない？」と誘さそいました。何なん年ねんかしてから，母ははも私わたしと同おなじように開かい拓たく奉ほう仕しを始はじめました。母ははにとって，それが生いきがいになりました。母ははは亡なくなるまでの10年ねん間かん，開かい拓たく奉ほう仕しを楽たのしみました。

 5人にんの子こどもたちがエホバに仕つかえるよう育そだてるのは，確たしかに簡かん単たんなことではありませんでした。エホバに仕つかえるかどうかは子こどもたちが自じ分ぶんで決きめることだというのを忘わすれないようにしていました。子こどもたちがどう決けっ定ていするかはコントロールできません。でも自じ分ぶんのことはコントロールできるので，私わたしはエホバの教おしえにとにかく従したがうようにしました。そして，言こと葉ばと行おこないで子こどもたちの手て本ほんになるよう一いっ生しょう懸けん命めい努ど力りょくしました。子こどもたちがエホバに仕つかえることを選えらんでくれて，とってもうれしいです。 d 5人にんの子こどもを育そだてることができたのは，本ほん当とうにエホバのおかげです。