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2016年11月18日
ロシア

パート2 補足

専門家は語る(独占インタビュー): 専門家がロシアによる「新世界訳聖書」禁止の動きを非難する

専門家は語る(独占インタビュー): 専門家がロシアによる「新世界訳聖書」禁止の動きを非難する

この記事は3回にわたるシリーズのパート2です。

最近の法改正で,ウラジーミル・プーチン大統領によって特定の聖典が禁止対象から明確に除外されたにもかかわらず,ロシア当局はエホバの証人が発行している「新世界訳聖書」を“過激主義的”として分類し,禁止しようと試みています。裁判所によって任命されたモスクワの社会文化研究センターによる「新世界訳」の調査が終わるまで,審理は延期されています。その間,宗教,政治学,社会学の分野で著名な学者や,ソビエト連邦とソ連崩壊後に関する研究の専門家への独占インタビューが行なわれました。

「新世界訳聖書」は聖書学者の間でどう評価されていますか。また翻訳者としてのエホバの証人の評判はどのようなものですか。

  • リンゴ・リングベー博士

    「『新世界訳』聖書は,原語にできるだけ近い意味を表現するべく,誠実に翻訳されている聖書の1つです。宗教組織によって出版されたすべての翻訳は特定の神学的な伝統を反映しており,『新世界訳』も例外ではありません。例えば,一貫して『エホバ』という語を用いていますが,だからといって翻訳の信頼性が落ちる訳ではありません。2014年にはエストニア語の『新世界訳』が出版されました。その聖書はエストニア語の他の聖書翻訳者からも注目を集めました。様々なキリスト教派や学会出身の翻訳者たちが,『新世界訳』聖書を明快かつさわやかな翻訳であると高く評価したのです。そして,エストニア語の『新世界訳』は教育科学省が発表した2014年度の国語功績賞で3位入賞を果たしました」。--リンゴ・リングベー博士(エストニア)。エストニア内務省宗務課顧問。エストニア福音ルーテル教会神学研究所,比較宗教学員外教授。

  • ロマン・ルンキン博士

    「エホバの証人が聖書に収められている基本的な価値観や原則を認めているということは,宗教学者の間では周知の事実です。エホバの証人は聖書翻訳者として良い評判を得ています」。--ロマン・ルンキン博士(ロシア)。モスクワ,ロシア科学アカデミー,ヨーロッパ研究所の宗教と社会に関する研究センター長,宗教と法律の専門家連合会長。

  • エカテリーナ・エルバキアン博士

    「今日多くの聖書翻訳があることは広く知られています。旧約聖書がギリシャ語に翻訳された『セプトゥアギンタ』訳から始まり,ロシア語を含む現代語の翻訳へとずっと続いてきました。当然ながら,どの翻訳も各言語独特の枠組みに起因するニュアンスの違いがあります。とはいえ大切なのは,どう訳されるかにかかわらず,原語の基本的な意味合いが正しく伝わることです。わたしの意見として,『新世界訳』はそういった翻訳です」。--エカテリーナ・エルバキアン博士(ロシア)。モスクワ労働社会関係アカデミーの社会学・ソーシャルプロセスマネジメント教授。ヨーロッパ宗教学会会員。ロシア語版「ウェストミンスター神学用語辞典」,「宗教学」,「宗教百科事典」担当編集長。

  • ゲルハルト・ベゼール博士

    「この『新世界訳』は,様々な宗教団体を代表する聖書学者たちから世界的に高い評価を受けてきました」。--ゲルハルト・ベゼール博士(ドイツ)。ドレスデン工科大学,ヨーロッパ研究,名誉教授。スタンフォード大学,講師。自由と民主主義研究のシグマンド・ノイマン・インスティテュート,ディレクター。

  • リュドムイーラ・フィリポビッチ博士

    「エホバの証人によって出される聖書翻訳は単なるアマチュアの信者たちによるものではありません。大勢のプロ翻訳者による,数年にわたる超大作であり,有名な言語学者,古代言語に関する精鋭の専門家たちが参加しています。専門家,特に聖書学者たちの分析によると,エホバの証人による新訳は,意味が前訳から変えられたところは無く,過激主義的な改変は見受けられませんでした。時代遅れでもはや理解されない語や,概念,表現は現代語に直されています。プロテスタントは普通にこの翻訳を受け入れており,世界的な聖書教育活動の一端であると認めています」。--リュドムイーラ・フィリポビッチ博士(ウクライナ)。ウクライナ国立科学アカデミー哲学研究所,宗教史と実践的宗教研究学部長・教授。ウクライナ宗教学者協会(UARR)副会長。

  • ジョージ・D・クリサイディス博士

    「『新世界訳』が主流の学者に批判されてきたことは否定できません。とはいえ,そういった批判は,教理の理解に関係したほんのわずかな聖句に対するものです。エホバの証人はいかなる過激主義や暴力活動を推進するようなものを聖書に加えたりはしていません。それとは逆に,エホバの証人は聖書を用い,平和を支持し暴力に反対してきました」。--ジョージ・D・クリサイディス博士(英国)。ウルバーハンプトン大学,元宗教学部長。ヨーク・セント・ジョン大学およびバーミンガム大学,現代宗教名誉主任研究員。

  • フランク・ラビッチ教授

    「[『新世界訳』]が“過激主義的”な文書だとは全く考えられませんし,良い翻訳だと思います。わたしは英語と日本語,ヘブライ語を話すマルチリンガルなので,翻訳に関する様々な問題について分かります。とはいえ,この『新世界訳』は,他の多くの良い翻訳と比べて翻訳上の問題が多いとも言えず,初版の『ジェームズ王欽定訳』のような翻訳と比べたら少ないくらいです」。--フランク・ラビッチ教授(米国)。ミシガン州立大学,法律・宗教のウォルター・H・ストワーズ教授職,法律学教授。

  • アイン・リースタン博士

    「聖書を完璧に翻訳することは決してできません。それには様々な理由があります。『新世界訳』には,自分なら別の訳し方をしたと思う箇所がありますが,これは他の全ての翻訳に対しても感じることです。わたしは(ロシア語を理解できるとはいえ)ロシア語の専門家ではありませんので,ロシア語翻訳についての文学的なクオリティーを判断することはできません。2014年にエストニア語の『新世界訳』が出版された際,一般の人々は非常に快く受け入れました。エストニア語翻訳の質と明瞭さゆえに,『文学における本年のハイライト』とさえ評されました。世界中の『新世界訳』の翻訳に同じ手法が用いられていることを考慮してみると,各言語の特性に基づいた小さな違いはあるものの,どの言語の『新世界訳』も基本的に同じ内容であると言えるでしょう。ロシア語版もエストニア語版と比べて大きな違いは見られないと思います。よって,この聖書は信頼できる翻訳であり,危険な,過激主義的な出版物では決してないと確信をこめて言えます」。--アイン・リースタン博士(エストニア)。タルトゥ大学,神学および宗教学部,新約聖書研究の講師。タルトゥ神学校,自由教会の神学および宗教の歴史,准教授。

  • バシリウス・J・グルーン博士

    「残念なことに,エホバの証人の聖書を没収すると決定した政府当局者の多くは信仰や聖書に関する知識が全くありません。当然,『新世界訳聖書』に全く問題はありません。数か所の翻訳部分に議論の余地はあるものの,それは他の翻訳でも同じです(わたし自身の所属するローマ・カトリック教会もです)」。--バシリウス・J・グルーン(オーストリア)。ユネスコ(国連教育科学文化機関)チェア「南東ヨーロッパの異文化・宗教間協議」のチェアホルダー。グラーツ大学,キリスト教典礼・美術・賛美歌学研究所所長,キリスト教の典礼および秘蹟論教授。

  • ホシン・サドク博士

    「わたしの学術的な見地から言いますと,この『新世界訳』は政府当局が見直さなければいけないようなものではありません。宗教文書であるため,民主主義国の当局が干渉するべきではありません。『新世界訳』が危険であるとか過激主義的だとか主張するのはナンセンスです」。--ホシン・サドク博士(フランス)。オート・アルザス大学,社会・法律経済学部,ディレクター,公法講師。

  • ウィリアム・キャバノー博士

    「特定の言葉やフレーズの翻訳に反対を述べる学者はいると思いますが,ほとんどの学者は基本的に,エホバの証人の聖書翻訳に敬意を持っていると思います」。--ウィリアム・キャバノー博士(米国)。デポール大学,世界カトリシズムおよび異文化神学理論センター長,カトリック研究教授。

エホバの証人が翻訳した聖書を“過激主義的”であるとして,禁止しようとしているロシア当局の動きについてどう思いますか。

  • 「『新世界訳』をロシア連邦に輸入することを禁止すれば,2015年の秋にプーチン大統領によって承認された,過激主義に関する連邦法第3条の修正条項に違反することになるでしょう。聖典の翻訳については法律で触れられていないからです。これら聖典(聖書,コーラン,トーラー,カンギュル)はどれも,元々はロシア語または教会スラブ語ではありませんでした。それで,ロシア連邦で使用されている聖典はみな,翻訳されたものです。繰り返しになりますが,翻訳は本当にたくさんあります。法律には,ロシア連邦ではどの翻訳を使用し,どの翻訳を禁止するかについての指定はありません。そのため,どの翻訳も使用できますし,特定の翻訳を禁止することは違法です」。--エルバキアン博士(ロシア)。

  • デリック・H・デービス博士

    「純粋な宗教書を禁止するのは疑わしい行為です。それも,エホバの証人など,確立され認められてきた宗教グループが長年にわたり使用している聖書に対するものならなおさらです。他のキリスト教団体が使用している多数の聖書翻訳が禁止されていないことからして,ロシアが聖書ではなく,エホバの証人を攻撃していることは明らかです」。--デリック・H・デービス博士(米国)。弁護士。ベイラー大学,J・M・ドーソン政教学研究所元所長。

  • ジェフリー・ハインズ博士

    「ICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)の加盟国として,そのような聖書を禁止しようとするロシアの試みは,信教の自由に関する国際協定に反することになるでしょう」。--ジェフリー・ハインズ博士(英国)。ロンドン・メトロポリタン大学,政治学教授,宗教・紛争・協力研究センター所長。ヨーロッパ政治学会連合(ECPR),宗教と政治に関する常設グループ,議長。

  • 「ロシアでは今まで,宗教が文化と成長の中心にありました。それなのに,当局は宗教を信頼できないものとして疑うようになっています。特定の聖典を保護する法律を採択したために,それら聖典の他の版が禁止されることになるとは,一体だれが想像したでしょうか。現在,何が神聖で何がそうでないのかを決める神学的・法律的な手順ができつつあります。その最初の被害者がエホバの証人であり,彼らの翻訳聖書だったわけです。しかし,2009年から彼らに反対する政治的な運動があったことを考えると,特に驚くべきことでもありません」。--ルンキン博士(ロシア)。

  • ウィリアム・S・B・バウリング教授

    「『新世界訳』がエホバの証人の発行している聖書であるという理由だけで,ロシアはその配布を禁止しているに違いありません。もちろん,このスタンスは合理的ではありません。コーランはコーランであるのと同様,聖書も聖書だからです。『新世界訳』の翻訳がとても慎重に行なわれたことを疑う余地などありません」。--ウィリアム・S・B・バウリング教授(英国)。ロンドン大学バークベック法科大学院,法学教授,人権の法学修士・文学修士課程指導員。ミドル・テンプルおよびグレイ法曹院の法廷弁護士。

  • ウィリアム・シュミット博士

    「新しい修正条項がエホバの証人や他の少数派(新しい宗派も含む)宗教に適用されないとは考えにくいです。この状況は,問題が政治的・法律的な性質であることを浮き彫りにしています。それは,政教関係を,社会的および政治的な活動が入り組む,公民的なプロセスで制御される特別な関係ととらえ処理する一般的なアプローチが欠如しているからです。この国[ロシア]では,政教関係に関する仕組みやアプローチ(慣例,手順,制度)が,政策レベルでいまだ明確に規定されていません。政府と正教の関係が曖昧であることを利用し,政府は正教の権益を守るため刑法や法律の特定の概念を選択的に適用しています。その結果,宗教界全体の空気が険悪なものになっています。なぜなら,これにより宗教間の対話が阻害させられるだけでなく,宗教の根幹にかかわる崇高な価値基準に政治的解釈が押し付けられるため,その価値観に泥を塗ることにもつながるからです。聖典を大切にするのはどの宗教伝統も同じです。伝統があるからこそコーパスも形成され教会法も確立されます」。--ウィリアム・シュミット博士(ロシア)。「Eurasia: the spiritual traditions of the peoples(ユーラシア: 人々の霊的な伝統)」誌,編集長。ロシア大統領府直属国立経済行政アカデミー(RANEPA),国家・連邦関係論教授。

  • 「ロシア当局が『新世界訳』を差別するべき理由を見つけられません。エホバの証人の聖書に過激主義的な要素は何もありません。ヘブライ語とギリシャ語本文に沿った翻訳で,主要な翻訳とほとんど何も変わりません」。--クリサイディス博士(英国)。

  • トーマス・ブレマー博士

    「ロシア当局はどうやら,エホバの証人を一度過激主義団体とみなしたため,その後の決定はすべてそれを前提にしているようです。これは,間違いだと言わざるを得ません」。--トーマス・ブレマー博士(ドイツ)。ニューヨーク大学,ジョーダン・ロシア高等研究センター,元主任研究員。ミュンスター大学,東方諸教会研究・平和研究,世界教会神学教授。

  • ジム・ベックフォード博士

    「これは驚くに値しません。ソ連が以前,少数派宗教に対して採用した政策と同じだからです。しかし,ロシアでは宗教活動を一律禁止するのではなく,公共の秩序を守り,危険な過激主義を防ぐという名目で制定された法律を使って少数派宗教をコントロールしようとしています」。--ジム・ベックフォード博士(英国)。イギリス学士院研究員,ウォーリック大学社会学名誉教授,宗教科学研究学会元会長(米国)。

  • ドミトリー・アスレイナー博士

    「宗教の分野にかかわる最近の法制定の背景にはこのような考え方があります。すなわち,伝統的と言われる宗教(ロシアにとって伝統的な宗教: ロシア正教会や,従来のイスラム教,ユダヤ教,仏教)と非伝統的な宗教(エホバの証人など)があり,伝統的な宗教はロシア社会に良い影響を及ぼすので国家から優遇されるべきだが,非伝統的な宗教はロシア社会に異なる価値観や生活様式を持ち込むがゆえに抑制される必要がある,と考えられているのです。ですから,エホバの証人や他の少数派宗教は信徒や4つの聖典を保護する新しい法律からほとんど益を受けられないでしょう。とはいえ,わたしは,エホバの証人や他の平和的な少数派宗教もロシア連邦内で憲法に定められた信教の自由を認められるべきだと考えます」。--ドミトリー・アスレイナー博士(ロシア)。モスクワ社会経済科学学校研究員。「国家,宗教と教会」編集長。

  • エリック・ラスバッハ氏

    「エホバの証人は,自分たちの聖書翻訳を自由に使う権利が認められるべきです。聖書を使用する権利は信教の自由という権利に深く結びついています。様々な宗派によるたくさんの聖書翻訳がある中で,エホバの証人が使っている翻訳だけを“過激主義的”とするのは,事実からしても間違いですし,エホバの証人が信仰を実践する上で大きな障害になります」。--エリック・ラスバッハ氏(米国)。宗教自由のためのベケット基金,次席法務顧問。

  • エミリー・B・バラン博士

    「特定の聖書翻訳に対する法的な禁止措置は,特定の宗派とその聖書解釈をターゲットにするものであり,宗教的寛容と真逆のスタンスです。政府が,正しい聖書の翻訳はどれかという神学的な論争に介入するべきではありません」。--エミリー・B・バラン博士(米国)。ミドルテネシー州立大学,ロシア・東ヨーロッパ史学,准教授。

  • アンドリュー・ウッド卿

    「現在,ロシア政府とロシア正教会に強いつながりがあります。ロシア連邦も複数の国からなっているように,ロシア正教会も他の正教会と異なる部分があります。ロシア正教会は,証人たちの『新世界訳』聖書がロシアで認められている4つの伝統的な宗教であるユダヤ教,キリスト教,イスラム教や仏教のいずれかの正式な聖典とみなされるのを受け入れないことでしょう。また,独自の聖典や信条を持ち,他の人にその考え方を説明するような人たちの影響を抑えようという意識は,頭の固い政府当局者の間でも働きます。旧ロシア帝国時代からエホバの証人がロシアにいたという事実があっても彼らはその態度を変えないでしょう。それは,これまでの証人たちに対する圧力の歴史を見れば明らかです」。--アンドリュー・ウッド卿(英国)。王立国際問題研究所,チャタム・ハウス,ロシア・ユーラシアプログラム準会員。元駐露イギリス大使(1995-2000)。

  • 「『新世界訳』だけでなく他の書籍が禁止され,『新世界訳』の翻訳も制限されているのは,ロシアにおける宗教の独占を図るためです。ロシア正教会は,エホバの証人の翻訳だけにとどまらず,カトリックのラテン語聖書である『ウルガタ訳』も認めていません。一方,カトリックはルター派の聖書を認めていません」。--フィリポビッチ博士(ウクライナ)。

  • ゾーイ・ノックス博士

    「過激主義対策法の修正条項は,一見するとキリスト教の聖書を検閲や禁止から保護するものです。とはいえ,聖典そのものではなく,聖典のうち特定の翻訳が保護されているようです。ですから,『新世界訳』は内容というより,エホバの証人が発行しているという理由で差し押さえられたのかもしれません。エホバの証人は,生活様式から,会衆組織,宗教的な信条や聖書の翻訳まで,伝統的なロシアの制度と相反する存在とみなされています。さらに,アメリカの宗教ともみなされています。まとめると,ロシアに正当な存在理由のないアウトサイダーだと思われているのです」。--ゾーイ・ノックス博士(英国)。レスター大学,現代ロシア史,准教授。

  • キャサリン・コスマン氏

    エホバの証人の聖書が大量に押収されたことからして,ロシア政府は特定の聖書翻訳のみ法的に『認可できる』とみなしていることが分かります。これは信教の自由をさらに侵害するものです。ヨーロッパ人権裁判所,ベネチア委員会,および欧州安全保障協力機構が提言しているように,ロシア政府は過激主義対策法を全面改正するべきです」。--キャサリン・コスマン氏(米国)。国際的な信教の自由に関する米国委員会(USCIRF)政策上級アナリスト(欧州および旧ソ連諸国)。

  • 「わたしは聖典を禁止することを支持しません。信仰の表現をロシアで制限しようとする動きは,ロシア正教会とロシアの国家主義が緊密に結びついていることが大きな要因です。多くのロシア人は,ソビエト連邦崩壊後に布教活動の“ゴールドラッシュ”が到来したことに懸念を抱いていました。ロシア正教会が共産主義政権時代から立ち直るための時間が必要であると感じたのです」。--キャバノー博士(米国)。

  • ジョン・A・ベルンバウム博士

    「エホバの証人が神の言葉を研究し,自らの翻訳聖書を持つ権利を強く擁護します。どんな行政機関も宗教文書の翻訳・出版に干渉すべきではありません。宗教的信条の自由は基本的人権であり,行政機関は多様な宗教観の自由な表現を認めるべきです」。--ジョン・A・ベルンバウム博士(米国)。モスクワの露米インスティテュート,学長。

  • アレクサンデル・ベルコフスキー氏

    「『新世界訳』に過激主義の要素を一片たりとも見つけることができませんでした。わたしたちは,ロシアにおけるエホバの証人への迫害と,彼らの発行文書やコミュニティーへの禁止を宗教的差別と見ています」。--アレクサンデル・ベルコフスキー(ロシア)。SOVA情報分析センター(モスクワに本拠を置くNPO。国家主義,排外主義,急進主義,教会と一般社会の関係に関する調査を行なっている)所長。

  • レジス・デリクブール博士

    「エホバの証人が翻訳した聖書はロシア社会への反対をあおる政治の本ではありません。数多くある聖書翻訳の1つに過ぎません。エホバの証人の聖書が“過激”と言われる理由は見当たりません。もしそうなら,政治的な過激主義に敏感な他の民主主義国家でも禁止されているはずです。ところが,民主主義国家では禁止されていません」。--レジス・デリクブール博士(ベルギー)。社会学者。アントワープFVG(宗教・ヒューマニズム比較研究校)新興宗教活動研究,准教授。

  • マーク・R・エリオット博士

    「悲しいことに,現代ロシアでは民族的および宗教的少数派の人権が頻繁に軽視されています。事実,外国人嫌いのロシアの役人が使う“過激主義”の定義は広いため,1876年版のロシア正教宗務院版を含むどんな聖書翻訳も過激主義的と定義される可能性があります」。--マーク・R・エリオット博士(米国)。ケンタッキー州,アズベリー大学,「東方および西方教会と活動の報告」創刊者。

  • 「ロシアは,キリスト教代表としてロシア正教会とその書物だけあればいいと思っているようです。ロシアでは,エホバの証人以外の宗教団体もいろいろてこずっています。どうやらロシアは旧ロシア帝国時代の考え方に戻っているようです。特に,米国で大勢の信者を擁する宗教団体はロシアで歓迎されません」。--ベゼール博士(ドイツ)。

  • シルビオ・フェラーリ博士

    「エホバの証人のロシア語翻訳聖書を“過激主義的”として禁止しようという試みはヨーロッパでも前例のない措置です。一方,『聖書,コーラン,タナッハ,カンギュル,またこれらの本の内容やそこからの引用』を禁止してはいけないとする規定それ自体は良いものですが,このことはそれらの聖典以外の聖典が差別されていることを暗示しています。他の宗教の聖典が“過激主義的”といえる証拠がない以上,この分け方は明らかに不条理です」。--シルビオ・フェラーリ博士(イタリア)。法律・宗教学国際コンソーシアム終身名誉会長。「オックスフォード・ジャーナル法律と宗教」(Oxford Journal of Law and Religion)共同編集長。欧州政教研究コンソーシアム,共同創立者。ミラノ大学,法律・宗教・教会法学部教授。

  • 「政府が宗教書物のどれが『正当』または許容される版なのかを決めるのはとても危険です。これは政府が決めることではなく,信者たちが議論して決めることです。聖書を含め,聖典には多くの版や解釈があり,政府が宗教上の真理の解釈を定め,信者に押し付けようとするのは国際法で定めた宗教の自由の原則に違反します」。--キャロリン・エバンズ博士(オーストラリア)。メルボルン法科大学院,学部長,ハリソン・ムーア教授職。「Religion and International Law(宗教と国際法)」,共同編集者。「Law and Religion in Historical and Theoretical Perspectives(歴史および理論的視点から見た法律と宗教)」,共同編集者。

  • ハビエル・マルティネス・トロン博士

    「憎悪を広めたり,公の秩序に反する場合を除き,ヨーロッパの国際法のどこにも,宗教コミュニティーの聖典を禁止できる根拠を見つけることはできません。宗教や聖書解釈の正当性を判断するのは国家の役割ではありません」。--ハビエル・マルティネス・トロン博士(スペイン)。コンプルテンセ大学法科大学院,法律・宗教学部長,法学教授。

  • ロバート・C・ブリット教授

    「ICCPR(市民的及び政治的権利に関する国際規約)は,ある宗教が『公式,または伝統的であるかどうかにかかわりなく,いかなる権利の享受が阻まれる結果をも招いてはならない』と長年規定しています。それで,特定の『伝統的な』宗教団体に特権を与えて,他の『非伝統的な』信仰の実践に制限を課すのは,宗教や信条による差別を禁止する条項と,平等な保護を保障するICCPRの規定に違反しかねないことになります」。--ロバート・C・ブリット教授(米国)。テネシー大学,法学部教授。国際的な信教の自由に関する米国委員会(USCIRF)元国際法専門家。

  • 「伝統的な宗教だけがロシア当局の差別を受けていないことから,この争いは対宗教というよりも,外国勢力に対するもののように見えます。現在のロシアの政治情勢は,政治的であれ宗教的であれ,反対意見につながりそうな意見や運動を敵対視する傾向にあります。ロシア当局は外国からの影響を領土内から排除したいと考えており,エホバの証人など,比較的新しい少数派宗教はロシア国内で外国の影響力を強めるものと見られています。それで,ロシア当局はエホバの証人を,好ましからざる北米大陸から来たグループ,と早合点してしまうのです。それで,ロシア当局にとって法的な視点はさほど重要ではなく,証人たちに対する法的な措置は,隠れみのに過ぎません」。--ホシン・サドク博士(フランス)。

  • マルコ・ベントゥーラ博士

    「政府の干渉によって,宗教コミュニティーや組織機関にとって当然認められるべき権利,すなわち,聖典を含む宗教文書の生産,輸入,頒布が大きく制限されています。その中にはエホバの証人の『新世界訳』聖書が含まれます。政府の干渉は,聖典の選択と確立といった本来宗教家の持つべき基本的な権利に及んでおり,ついには聖典の翻訳や解釈にまで口を差し挟むようになっています。この結果,ロシアの行政当局は宗教的な真理や聖典に対して,中立かつ公平な立場を取る義務を怠っていることになります」。--マルコ・ベントゥーラ博士(イタリア)。シエナ大学,法律・宗教学教授。ブルーノ・ケスラー財団,宗教研究センター,所長。ストラスブール大学(フランス),法律・宗教・法人・社会センター(DRES),准研究員。

  • 「個人的な見解ですが,これはロシアで信教の自由があるのかどうかが曖昧であることに起因していると思います。ロシアで最近問題となった宗教グループはエホバの証人だけではありません。とはいえ,聖書の翻訳が禁止されたことは一番気がかりです。1つの翻訳を禁止すれば,理論上すべての翻訳が禁止の対象になり得るからです。となれば,修正条項は聖典の原文(聖書の場合ならヘブライ語,アラム語,ギリシャ語)にしか適用されないということになります。では,写本はどのように扱われるのでしょうか。この点を考えるだけでも,禁止の恣意性が分かります。この禁止措置は,翻訳を問題視しているものではないことは明らかです」。--リースタン博士(エストニア)。

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