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世界展望

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製品の少量化

「スーパーサイズや大型RV車の時代だが,実際には小さくなっている商品もある」とタイム誌は伝えている。「メーカーはパッケージ詰め商品 ― ヨーグルトやアイスクリーム,それに洗剤やおむつ ― の中身をこっそり減らしている。しかもたいてい,それに見合った値下げはしない」。新手の方策ではないものの,経済が落ち込み,消費者は財布のひもを締め,値段に敏感になっているため,多くのメーカーは採算を取ろうとして製品の少量化をより積極的に進めている。ほとんどの客は,商品の重さや大きさが数グラムあるいは数センチ変わっても気づかないが,結局は,受け取る量は少ないのに支払うお金は多くなる。「消費者は,何かを買うたびに正味重量や数量をチェックする必要があるとは思ってもいない」と,消費者保護ウェブサイトの開設者エドガー・ドースキーは言う。「消費者はだまされたことを知らないのだから,完璧な詐欺だ」。

石けんが命を救う

ロンドン衛生・熱帯医学学校の講師バル・カーティスによると,石けんで手を洗うだけで下痢性の疾患にかからずにすみ,1年に100万人の命が救われる。京都で開かれた第3回世界水フォーラムにおいてカーティスは人間の排せつ物中の病原菌を「一般大衆の最大の敵」と呼んだ,とデイリー・ヨミウリ紙(英語,2003年3月18日付)は伝えている。「一部の地域社会では,トイレを済ませた幼児の体を洗った女性が,自分の手を洗わずに食事の用意をすることも珍しくない」と同紙は言う。石けんと水で手を洗えば,死をもたらすウイルスや細菌が広まるのを防ぐことができる。またカーティスによれば,発展途上国では,水質を向上させるよりも石けんで手を洗うほうが,下痢性疾患の危険性を減らす費用効率は3倍高い。

アルプス街道

ビア・アルピーナ(アルプス街道)というウォーキング・コースが最近,2002年にヨーロッパに開通した。「アルプス街道を歩けば,昔ながらの道沿いに広がるヨーロッパ屈指の魅力的な田園風景を5,000㌔にわたって楽しめる」と,ロンドンのインディペンデント紙は言う。アルプスの8か国を結ぶこの道は,イタリア北東沿岸のトリエステの海抜0㍍地点に始まり,モナコのモンテカルロの同じく海抜0㍍地点に至る。幾つかの山頂を囲むように山間部を縫って進み,標高3,000㍍の最高地点まで緩やかに登って行く。厳選された道は,「自然や文化の面で興味深い有名な場所の近く」を通っている,とフランスの観光協会ラ・グランド・トラベルセ・デザルプは言う。必ずしもコース全体を歩く必要はない。むしろ,インディペンデント紙が述べるように,「家族ぐるみで行くとよい。何キロか歩いてみて,家に帰ることもできる。それでもビア・アルピーナでのウォーキングは,自宅の比較的近くで健康的にのんびりと,現実から解放されて休日を過ごしたいと思う人にとって新鮮な体験となる」。街道沿いにはホテル,ペンション,山荘が300軒あり,そこで一泊することも可能だ。

海洋生物の種が消滅している

カナダのハリファクスにあるダルハウジー大学の海洋生物学者ランサム・マイヤーズ博士と,ドイツのキールにある海洋科学研究所のボリス・ウォルム博士によれば,世界の海は,捕獲されていない大量の魚がすむブルー・フロンティアなどではもはやない。遠洋漁業船団が魚の居所を突き止めるために用いる人工衛星やソナーなどの科学技術の進歩により,海洋生物の種が次々と絶滅に追いやられている,と両博士は言う。トロントのグローブ・アンド・メール紙が報じているように,「過去50年間に天然の大型魚はどの種も系統的に捕獲されたため,それぞれの種の90%はいなくなってしまった」。こうした魚や,マグロ,タラ,カレイ,マカジキ,メカジキのような貴重な食用魚がいなくなれば,世界の海の生態系は大きな影響を受ける,とマイヤーズ博士は考えている。ウォルム博士は,「人間は地球の生命維持システムをいじっているが,良くないことだ」と述べている。

マラリアはアフリカで勢力を強める

「アフリカ大陸では毎日3,000人の子ども」がマラリアのために亡くなっている,とフランスのル・フィガロ紙は伝えた。世界保健機関(WHO)によると,アフリカでは年に3億人以上が急性のマラリアに感染し,少なくとも100万人が死亡している。ブルンジでは2000年に,過去最悪とも言えるマラリア被害が出た。7か月で人口の半分に当たる約350万人が感染した。厄介なことに,それは薬剤への耐性を持つ寄生虫で,キニーネによる治療が効かなかった。キニーネに代わるものとしてクソニンジン(Artemisia annua)という中国の植物から抽出された新しい抗マラリア薬があるが,アフリカの多くの国は費用が高くつくことを恐れて使おうとしない。結果として「マラリアはアフリカで依然として勢力を強めている」と,WHOの一当局者は述べた。

ラテン語を存続させる

ラテン語を死語とみなす人は少なくないが,バチカンはラテン語の存続と現代化に努めている。なぜだろうか。バチカンではイタリア語も使われているが,公用語はラテン語であり,回勅などの公文書では今もラテン語が使われている。ラテン語の使用は1970年代にめっきり減った。ミサは地元の言語で行なってよいという勅令が出されたためである。法王パウロ6世がラテン語の存続を図ってラテン語協会を設立したのはそのころだった。一策として,2巻で成るラテン語-イタリア語辞典が出版され,完売した。今では,合本になった新しい版が出版され,115㌦(約1万2,700円)で売られている。この辞典には,escariorum lavator<エースカーリオールム ラワートル>(食器洗い機)のようなラテン語の現代語およそ1万5,000語が収録されている。新版が「二,三年以内に発行される予定」とニューヨーク・タイムズ紙は言う。追加語のほとんどは,「コンピューターや情報関係」の用語と見られる。

理解されていない説明

「患者は病院で医師から聞いた話を80%近く忘れてしまい,覚えている内容も半分近くは正確でない」と,科学関係の時事通信であるwissenschaft.deは数か国で実施された調査について伝えた。オランダのユトレヒト大学の研究者ロイ・ケセルスによると,そのように忘れてしまう主な原因は,高齢,先入観,ストレス,視覚に訴える説明の不足である。医師に対しては,肝要な情報が患者の記憶に残るよう,分かりやすくはっきりと話し,最も大切な点を最初に述べ,レントゲン写真のような視覚に訴える手段を用いることが勧められている。