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世界展望

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美しいが厄介物

ホテイアオイは紫色の美しい花を付ける水生植物。数十年前にアフリカのビクトリア湖へ持ち込まれたが,あまりに速く繁茂して,現在では湖面の2,000平方㌔を覆ってしまい,重要な水産業に支障を来たしている。ケニア,タンザニア,ウガンダなど湖岸の諸国では,水産業で暮らしを立てている人が非常に多い。ウガンダでは,水を供給する導管が詰まり,水道や水力発電に深刻な問題が起きている。蚊,カタツムリ,ヘビなどにとって理想の環境となったため,ヘビにかまれたり,マラリアや住血吸虫症(ビルハルツ住血吸虫症)にかかったりするケースが増えている。ホテイアオイを常食にするゾウムシも持ち込まれたが,今のところ,この植物の爆発的な増殖に追いつけない。漁業関係者たちはやむなく手作業でこの雑草を取り除くことにし,何千トンかを刈り取った。しかしこれは一時的な解決にしかならない。世界銀行は,莫大な費用をかけて湖からこの草を除くプロジェクトを手掛けている。

インターネットとお年寄り

電子メールは,介護施設にいるお年寄りにとって楽しみとなっている。「専門家によれば,老人ホームの居住者は,虚弱な人たちも含め,Eメールやインターネットを通じて,コンピューターにすぐに親しむようになり,生活に張りを取り戻している」とニューヨーク・タイムズ紙は述べている。「このテクノロジーを習得した人は自信がつき,それが生活の他の面にも及んでいる。仲間の居住者にこの技術を教えることで自尊心を得る人も多い」。Eメールによって,お年寄りが,単に遠くの家族や医療介護関係者,長年の友人たちと連絡を取ることができるだけでなく,病気や高齢のために老人ホームや車椅子に縛られている人たちに迫る無力感,退屈さ,孤独といったものを克服するのにも大いに役立っている。意欲がわき,憂うつさからも抜け出せる。お年寄りの中にはオンライン教育プログラムに参加する人もいて,蓄えてきた知識や知恵を,これからの世代に伝えることさえしている。しかし,キーボードをもっと使いやすくし,画面の文字を簡単に大きくできるようにするなど,幾らか改善も必要である。

水中のガンマン

まるで西部劇のようだ。決闘をする者どうしが向かい合う。弾をこめ,おもむろにそれをもたげる。最初の者が発射して後退すると,もう一方がねらいを定めて発射する。しかし,このテッポウコエビが戦ったところで負傷者は出ない。お互いに安全な距離を守るからだ。しかし,ニュース雑誌「シュピーゲル」によると,彼らの右のはさみから出る水の噴射はいつでも無害とは限らない。この水鉄砲を,虫やカニや小魚類の獲物を気絶させて,殺すためにも使う。この水の噴射は,はさみを勢いよく閉じることで生まれるが,水槽のガラスを割ってしまうほどの強さがある。テッポウコエビがもしも自分の武器を失うと,この小さな“ガンマン”は左ききになって左のはさみが新しいピストルとなり,初めの利き手は普通のはさみになる。

人為的食糧不足

「内乱や経済危機といった,人が誘発した災いは,自然が誘発する危機以上に食糧不足の原因となってきた」と国連食糧農業機関(FAO)は伝えている。FAOの副事務局長ハルトビヒ・デ・ハン博士は次のように述べた。「1984年には,すべての非常事態のうち,人為的な災いが原因となったものは約10%に過ぎなかった。現在,それは50%を超えている」。35の国の5,200万人の人々が食糧不足に直面していると推定されている。報告は,「これほど多くの人が深刻な食糧不足に直面するのは,1984年にアフリカのサハラ以南で起きた干ばつ以来のこと」と述べた。

汚染源となる偶像

ヒンズー教徒の間では,儀式を行なった祝祭日の後に,最寄りの水場で偶像を水に浸すことが一般的な習慣になっている。偶像に草花や野菜からの顔料で色を塗っていたころには,環境上の問題は起きなかった。しかし,像の製造業者たちが,塗料を重金属や発がん物質を含むものに変えたため,インドのある地域では,たくさんの偶像が小川や湖水に浸される結果として深刻な水質汚染が起きた。水質汚染を抑えるため,ある町の住民は,何百という偶像を広い所に集めてばらばらに壊した。このことをインド中で行ない,偶像の製作者は合成塗料ではなく,伝統的な顔料を使うのはどうかと,ダウン・トゥー・アース誌は提案している。「さもなければヒンズー教徒の崇拝する川は,自分たちの崇拝する偶像で汚染されてしまう」と同誌は述べている。

若者についての世界的調査

12歳から24歳までの若者4,300人を対象にした調査によって,今日の若者は,信頼性,礼儀,勤勉に働くことなど,伝統的に評価されてきたものを尊重していることが明らかになった,とグローブ・アンド・メール紙は述べている。11の国の若者を調査したアンガス・リード・グループによれば,95%の人が,『約束を守ること』がいちばん大切と答えた。「他の人に親切にすること」が次に重要としたのは92%で,「勤勉に働くこと」を回答者の83%が高く評価していた。「生涯の伴侶を持つことは大切と考えているのは10人中ほぼ8人」だったが,結婚することが大切と考えているのはわずか56%だけだった。意外なことに,「本当に金持ちになること」を重要と考えていた人は31%しかいなかった。さらに,「21世紀について前向きに考えている」のはわずか45%であることも調査は示した。

ウェブサイトの数

ワールド・ワイド・ウェブは,世界中の無数のコンピューターをつなぐ巨大なコンピューター・ネットワークである。インターネットソフト開発業者のインクトミは,それがどれほどの規模になっているかを確かめるため,4か月をかけてウェブを調査,分類した。結果はどうだっただろうか。重複を避けて数えたところ,それは何と10億ページを優に超えていた。ウェブ上で共通に使われている言語として飛び抜けているのは英語である。調査時点では86%以上が英語だった。ウェブ文書全体で,フランス語のものは2%を少し上回り,オランダ語は約0.5%だった。

医薬が毒物に?

米国の医学研究所の報告によると,医療上のミスによって,入院中のアメリカ人が年にざっと4万4,000人から9万8,000人も死亡している。この問題は,病院やクリニックや薬局の運営上の不備によるとされている。例えば薬剤師は,医師の書いた読みにくい文字のせいで,処方箋どおりに調合するのが難しいことがある。医師は10ミリグラムと書いたのだろうか,あるいは10マイクログラムと書いたのだろうか。問題をさらに複雑にしているのは,多くの薬には似たような名前が付いていることで,医師,看護婦,薬剤師,そして患者も,混乱してしまう。医学研究所は,5年以内に医療過誤を50%減らすよう勧告している。

羽毛のある化石のねつ造

中国の遼寧省で見つかったある化石について,ナショナル・ジオグラフィック誌は,「まさに恐竜と鳥を結ぶ複雑な進化の“失われた環”(ミッシング・リンク)」と述べた。「アルカエオラプトル・リャオニンゲンシス」と名づけられたこの化石には,恐竜の尾と,鳥の胸部や肩があると言われていた。しかし今,科学者たちは「多少の化石のねつ造によって惑わされた」との感を強くしている,とサイエンス・ニューズ誌は報じている。その化石を調査した古生物学者たちは,尾と胴体をつなぐ骨がないことや,岩盤に加工を施した形跡のあることに気づいて,疑いを抱くようになった。その記事によると,カナダ,アルバータ州ドラムヘラーにあるロイヤル・ティレル古生物博物館のフィリップ・カリーは,だれかが「『アルカエオラプトル』の価値を高めようとして,恐竜の尾の一部を鳥の化石に付けたのではないか」と推測している。

活仏の即位

「中国当局は,チベットの宗教の重要な『活仏』として2歳の少年の即位式を催した」とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。このソイナム・パンコグという男児は,670人の子どもの中からレティン・ラマ7世として選び出された。このレティン・ラマを選んだ僧たちは占いによって彼を選び出した,とされている。「とはいえチベットの多くの人々や僧たちが,この男児を本物と認めるかどうかは疑問」と同紙は述べている。なぜか。チベットの最高位の宗教指導者ダライ・ラマは,それより前に,レティン・ラマを独自に選んだことを発表していたからである。レティン・ラマたちは過去に,ダライ・ラマの不在時に摂政を務めたことがある。