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突然変異 ― 進化の基盤ですか

突然変異 ― 進化の基盤ですか

第8章

突然変異 ― 進化の基盤ですか

1,2 どんな仕組みが進化の基盤であるとされていますか。

 進化論はもう一つの難しい問題に直面しています。進化はいったいどのようにして起きたと考えられているのでしょうか。ある型の生物を別の型の生物に進化させた基本的な仕組みとみなされているものは何でしょうか。細胞の核の中の様々な変化がその役割を担っている,と進化論者たちは述べます。そして,そうした変化の中で主要なものは,突然変異と呼ばれる「偶発性の」変化です。これら突然の変化に特に関与しているのは,性細胞の中の遺伝子と染色体である,と考えられています。それらの部分における変異は子孫に伝えられるからです。

2 「突然変異……は進化の基盤である」と,ワールドブック百科事典は述べています。1 同様に,古生物学者ステブン・スタンレーは,突然変異を進化の「原材料」と呼んでいます。2 また,遺伝学者のペオ・コラーは,突然変異は「進化の過程のために必要である」と言明しました。3

3 進化のためにはどのような突然変異が求められますか。

3 しかし,突然変異であればどんなものでも進化の求めにかなうわけではありません。ロバート・ジャストローは,「好ましい突然変異が徐々に蓄積すること」の必要性を指摘しています。4 カール・セーガンはさらにこう述べています。「突然変異,すなわち,遺伝上の急な変化が固定した型を造る。それらは進化の原材料となる。環境は,生存力を高める幾つかの突然変異を選び取り,それが,一つの生命形態から別の形態への,一連のゆるやかな転換,新しい種の起源という結果になる」。5

4 突然変異が急速な進化論的変化と関係しているかもしれないという主張にはどんな難しさが伴いますか。

4 突然変異は「断続平衡」の理論に求められる急速な変化のかぎであるかもしれない,とも言われています。サイエンス・ダイジェスト誌の中で,ジョン・グリードマンはこう書きました。「進化論修正主義者は,主要な調節遺伝子における突然変異こそ,彼らの非連続的進化理論が必要とする遺伝子の削岩機ではないか,と考えている」。ですが,英国の動物学者コリン・パターソンは,「推測することは自由であるが,我々は調節の役をするそれら親遺伝子については何も知らない」と述べています。6 しかし,上記のような推測を別にすれば,進化に関与する突然変異は小さな偶発性の変化で,それが長い期間にわたって蓄積してゆく,というのが一般に受け入れられている見方です。

5 突然変異はどのようにして起きますか。

5 突然変異はどのようにして起きるのでしょうか。その多くは普通の細胞増殖の過程で生じる,と考えられています。しかし,それは放射線や化学物質などの外的素因によっても引き起こされることが実験によって示されています。そして,それはどれほどの頻度で起きるのでしょうか。細胞内における遺伝物質の複製は驚くほど一貫しています。一つの生体内で分裂する細胞の数と比べてみるとき,突然変異はごくまれにしか起きない,と言えます。アメリカーナ百科事典が述べるとおり,「遺伝子を構成するDNA連鎖の」複製は「驚くほど正確であり,ミスプリントや誤写はまれにしか起きない事故」です。7

それらは有用か,それとも害になるか

6,7 有益ではなくむしろ有害である突然変異はどれほどの比率で起きますか。

6 有益な突然変異が進化の基盤になるのであれば,どれほどの比率で有益な変異が起きるのでしょうか。この点に関して進化論者たちの意見は圧倒的な一致を見ています。例えば,カール・セーガンはこう言明しています。「その大部分は有害もしくは致死的である」。8 ペオ・コラーはこう述べています。「突然変異の大多数はその変異遺伝子を持つ個体にとって害になる。成功した,もしくは有用な突然変異一つに対して有害なものは幾千もあることが,何度かの実験によって明らかにされた」。9

7 したがって,“中間的な”突然変異を除外すれば,有害なものは,有益とみなされるものを幾千倍も上回っています。「何であれ複雑化した機構に起きる偶発性の変化については当然そのような結果が見込まれる」と,ブリタニカ百科事典は述べています。10 遺伝子性のものと判断される幾百もの病気が突然変異による,とされているのもそのためです。11

8 実際の結果は一百科事典の所見の真実さをどのように示していますか。

8 突然変異が一般には有害なものであるために,アメリカーナ百科事典は次のように認めています。「大部分の突然変異が生物体にとって害になるという事実は,突然変異が進化の原材料の源であるという見方と調和しにくいように思われる。実際のところ,生物学の教科書に例示される突然変異体は珍種や奇形の集まりであり,突然変異は建設的というより破壊的な過程のように思われる」。12 突然変異の起きた昆虫を正常なものと一緒にして競合させると,その結果はいつも同じでした。G・レドヤード・ステビンズが観察したとおり,「多かれ少なかれ幾世代かするうちに突然変異体は排除されてしまい」ます。13 変異体は決して向上しておらず,むしろ退歩しており,不利な条件を持つゆえに競合することができませんでした。

9,10 突然変異が進化の説明になるという主張はなぜ正当なものではありませんか。

9 その著,「生命の源泉」の中で,科学著作家アイザック・アシモフは,「大部分の突然変異が悪いほうへ進む」ものであることを認めています。それでも,彼はその後にこう断言しています。「結局のところ,確かに突然変異が進化の過程を進行させ,上のほうに向かわせるのである」。14 しかし,実際にそうでしょうか。1,000回のうち999回以上が有害な結果になった過程が有益なものとみなされるのでしょうか。家を建てたいと思う場合,あなたは,一回の良い仕事をするために欠陥のある仕事を何千回も行なう建築者を雇うでしょうか。自動車を運転する際に数千回の誤った判断をしてやっと一回の正しい判断を下すような運転者がいる場合,あなたはそのような人と同乗したいと思うでしょうか。手術中の外科医が一度の正しい動作をするために数千回の誤った動作をするとすれば,あなたはその人に手術をしてほしいと思うでしょうか。

10 遺伝学者のドブジャンスキーはかつてこう述べました。「精巧な仕組みにおける偶発的な出来事,無作為の変化によってその仕組みが改良されることはまず期待できない。時計やラジオの器械装置の中に棒を突き入れ,それによってその器械の働きが良くなるようなことはめったにない」。15 ですから,考えてみてください。生物に見られる,驚くほど複雑な細胞,器官,手足や種々の生理作用すべてが,実際には破壊の手順によって作り上げられてゆく,というのは道理にかなったことに思えるでしょうか。

突然変異によって何か新しいものが生み出されるか

11-13 突然変異によって何か新しいものの生み出されることがありますか。

11 仮にすべての突然変異が有益なものであったとしても,それによって何か新しいものが生み出されるのでしょうか。いいえ,そのようなことはありません。突然変異は既に存在している形質の変形であるにすぎません。それは変種を作りはしても,決して新しいものを生み出すわけではありません。

12 ワールドブック百科事典は,有益な突然変異によってどのような事が起こりうるかの例を挙げています。「乾燥地域のある植物が,その植物を大きくならせ,根を強くならせるような突然変異遺伝子を持つかもしれない。その植物は,根が水をより多く吸うことができるために,同じ種の他の植物より生存の可能性が高くなるであろう」。16 しかし,何か新しいものが出現したのでしょうか。いいえ,それは依然としてその同じ植物です。何か別のものに進化しているわけではありません。

13 突然変異によって人の髪の毛の色や感触は変化するかもしれません。しかし,髪の毛は常に髪の毛のままでしょう。それが羽毛に変わるようなことは決してありません。人の手が突然変異によって変わることもありえます。指が異常になるかもしれません。6本指,その他,何かの点で奇形の手ができるようなこともあるかもしれません。しかし,それはやはり手です。それが何か別のものに変わることはありません。何か新しいものが生じているわけではなく,それがいつか生じるわけでもありません。

ショウジョウバエの実験

14,15 ショウジョウバエに関する幾十年もの実験は何を明らかにしましたか。

14 突然変異に関する実験と言えば,果物につく普通のショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)に関してなされた大々的な実験に並ぶものはほとんどありません。1900年代の初め以来,科学者たちは幾百万匹ものこのハエにX線を照射してきました。これは突然変異の頻度を普通の百倍以上に高めました。

15 以来数十年,実験はどんなことを示したでしょうか。ドブジャンスキーは一つの結果を次のように明らかにしました。「Drosophilaについては遺伝学上の古典的研究が非常に多くなされたが,その明確な突然変異体は,発育力,生殖力,寿命などの点で,ほとんど例外なく野生種より劣っている」。17 もう一つの結果は,突然変異によって何も新しいものは生み出されなかった,という点です。それらのショウジョウバエは奇形の翼,脚部,体,その他の欠陥を持つようにはなりましたが,それらは常にショウジョウバエのままでした。そして,突然変異の起きたハエどうしを交配させると,何世代もするうちには,正常なショウジョウバエが幾らか生まれ出て来ることが判明しました。自然の状態に置かれると,それら正常なハエがやがては弱いほうの突然変異体を上回って生存し,ショウジョウバエを元々存在していた形に維持したのです。

16 遺伝の暗号は生物体の種類の維持にどのように役立っていますか。

16 遺伝の暗号であるDNAは,遺伝子の損傷を自ら修復する驚くべき能力を備えています。これは,暗号によって定められた生物体の種類を維持するのに役立っています。サイエンティフィック・アメリカン誌は,「すべての生物体の生命,および世代から世代に続くその連続性」が,遺伝子の損傷を「終始修復する酵素によって」維持されていることについて説明しています。同誌はこう述べました。「特に,DNA分子の重大な損傷があると,緊急反応が誘発され,それによって修復酵素の合成される量が増大する」。18

17 ゴールドシュミットが突然変異の実験で失望したのはなぜですか。

17 そのため,「ダーウィン再考」という本の中で,その著者は,尊敬された遺伝学者である,故リチャード・ゴールドシュミットについて次のように述べています。「ショウジョウバエの突然変異を多年観察した後,ゴールドシュミットは絶望に陥った。変化はどうしようもないほどミクロな[小さな]ものであるから,1,000の突然変異が一つの実験体と結び付いたとしても,新しい種はやはり生じないであろう,と彼は嘆いた」。19

ペパードモス

18,19 ペパードモスについてどんな主張がなされていますか。なぜ?

18 進化論の読み物の中では,英国のガの一種であるペパードモスが,進化の進行している現代の好例としてしばしば取り上げられます。インターナショナル野生生物百科事典はこう述べました。「これは人間がこれまでに目撃した中で最も目ざましい進化論的変化である」。20 ダーウィンがただ一つの種の進化をさえ実証できないことに悩まされていたことについて述べた後,ジャストローは,その著,「赤色巨星と白色矮星」の中でこう付け加えています。「それを知っていたなら,彼が必要としていた証明のための実例が手近にあったのである。それは極めてまれな例であった」。21 その例とはもちろんペパードモスのことです。

19 そのペパードモスにいったいどんな事が起きたのでしょうか。初めは,このガのうち明るい色のものが暗い色のものより多く見られました。この,明るい色のタイプは樹木の幹の明るい色調とよく溶け合い,その分だけ鳥の攻撃から保護されました。しかしその後,工業地帯での幾年もの汚染のために,樹木の幹は暗い色に変わりました。これは明るい色調のガにとって不利になりました。鳥はそのようなガのほうを早く見つけて食べることができたからです。そのため,突然変異体と言われる,色の黒いほうのペパードモスがより多く生き残りました。ばい煙で黒くなった木々のために鳥はそれを見つけにくくなったからです。暗い色のものが短期間に優勢になりました。

20 ペパードモスが進化してはいないことについて英国の一医学雑誌はどのように説明しましたか。

20 しかし,そのペパードモスは何かほかの型の昆虫に進化したのでしょうか。そうではありません。それは依然として同じガそのものであり,単に色合いが変わったにすぎません。そのため,英国の医学雑誌「オン・コール」は,進化を証明しようとして引き合いに出されるこのガのことを,「悪名高い」実例,と評しています。同誌はこう言明しました。「これはカムフラージュ機能の優れた実証ではあるが,ガに始まってガで終わり,何ら新しい種は形成されていないのであるから,それは進化の証拠としてはしごく無意味である」。22

21 抗生物質に対して抵抗力を持つようになるとされている細菌の能力に関してどんなことが言えますか。

21 ペパードモスが進化しているというような,正確さの欠けた主張は,他の幾つかの場合と似ています。例えば,ある種の細菌が抗生物質に対する抵抗力を示しているため,進化が起きている,と唱えられています。しかし,耐久力の強い細菌は依然として同じ菌型のものであり,何か別のものに進化しているわけではありません。そして,その変化は突然変異によるのではなく,むしろある細菌が元々抵抗性を持っていたからではないか,という点さえ認められています。薬によって他の菌が死に絶えたとき,抵抗性のあるものが増殖して,優勢になったのです。「宇宙からの進化」という本が述べるとおり,「これらの例の場合,既に存在していた遺伝子の中からの選択ということ以上の何かが関係していたということについて,わたしたちは疑問を持つ」のです。23

22 ある種の昆虫が毒物に対して抵抗性を持つようになるのは,それが進化しているという意味ですか。

22 使用された毒物に対して抵抗性を示したある種の昆虫の場合にも同じような過程が当てはまっていたのかもしれません。毒物がその対象となった昆虫を殺した場合もあり,効きめを持たなかった場合もあります。殺された昆虫は,既に死んだために抵抗力を発展させることができませんでした。あるものが生き残ったのは,初めから抵抗性を備えていたからだとも考えられます。そのような抵抗性は遺伝的因子によるもので,ある昆虫に現われても,他の昆虫には発現しなかったりします。いずれにしても,その昆虫は同じ種類内にとどまっていました。何かほかのものに進化していたわけではありません。

「その種類にしたがって」

23 創世記の述べるどんな基準が突然変異によっても確証されましたか。

23 突然変異によって再度確証された音信は,創世記 第1章にある,生物はただ「その種類にしたがって」繁殖する,という公式です。これは,それぞれの植物や動物がその種類の標準から大きくはずれることを遺伝の暗号が阻むからです。多彩な変種は存在しますが(例えば,人間,ねこ,犬などにも見られるとおり),ある生物が別種の生物に変わるほどの変化は起きません。突然変異に関してこれまでになされたすべての実験がこの点を証明しています。また,もう一つ実証されているのは,生命はそれ以前に存在していた生命のみから来る,そして,親生物とその子孫とは同じ「種類」であるという,生物発生の法則です。

24 品種改良の実験は生物がただ「その種類にしたがって」繁殖することをどのように示しましたか。

24 品種改良の実験もこの点を確証しています。科学者たちは,種々の動物や植物を掛け合わせによって無限に変化させてゆくことを試みてきました。それにより,やがて新しい形態の生物を発展させることができるのではないか,と期待されました。どんな結果になったでしょうか。オン・コール誌はこう伝えています。「育種家たちは普通,何世代かすると最大の限界に達し,それ以上の改良は不可能であることに気づいている。そして,新しい種が形成された例はない……したがって,育種の過程は,進化論を裏付けるというより,それに反論しているように思われる」。24

25,26 生物における繁殖の限界について科学の出版物は何と述べていますか。

25 サイエンス誌の中でもほぼ同様の所見が提出されています。「種は確かに,身体その他の特性の点で種々の小さな変化をする能力を備えてはいるが,それには限界があり,長期的に見ると,それは中間的[平均値]の周囲のゆれとして表われている」。25 ですから,生物が遺伝によって受け継ぐものは,継続的に変化してゆく可能性ではなく,むしろ,(1)安定性であり,また,(2)変異の幅の限定性です。

26 そのため,「分子から生きた細胞へ」と題する本はこう述べています。「細胞は,ニンジンの細胞にせよ,ハツカネズミの肝臓の細胞にせよ,生殖のサイクルをどれだけ繰り返した後にも,それぞれの組織と生体の独自性を一貫して保持している」。26 また,「細胞進化における共生関係」という本は,「生物はすべて……信じられないほどの忠実性を保ちつつ繁殖する」と述べています。27 サイエンティフィック・アメリカン誌もこう述べました。「生物はその形態においてすこぶる多様であるが,どれを取ってみても,一つの系統の中では,その形態は驚くほど一定している。何世代たってもブタはブタのままであり,カシの木はカシの木のままである」。28 また,一科学著作家はこう注解しました。「バラの木はいつもバラの花を咲かせ,ツバキを咲かせることは決してない。また,ヤギは子ヤギを産み,子羊を産むことは決してない」。突然変異は「全体的な進化,つまり,なぜ魚類,爬虫類,鳥類,哺乳類がいるのかということの説明とはならない」と彼は結論しました。29

27 ダーウィンはガラパゴス諸島のフィンチについてどんな誤った解釈をしましたか。

27 一つの種類内での変種ということは,進化に関するダーウィンのそもそもの考えに影響を与えた,ある事柄の説明となります。ガラパゴス諸島に来た時,ダーウィンはアトリ科の鳥であるフィンチを観察しました。それらは南アメリカ大陸にいるその親種と同じ型の鳥であり,明らかに南アメリカから移り住んだものでした。しかし,くちばしの形など,奇妙な相違点がありました。ダーウィンはそれを,進行過程にある進化,と解釈しました。しかし,実際のところそれは,生物の遺伝子的な組み立てによって許容された,個々の種類内での変種の一例にすぎません。フィンチは依然としてフィンチのままでした。それらは何かほかのものに変わりつつあったのではありませんし,そのようなことは今後も決して起きないでしょう。

28 それで,科学上の事実が,「その種類にしたがって」と述べる創世記の規則と全面的に調和しているかどうかについて何と言えますか。

28 こうして,創世記が述べている事柄は科学上の事実と全面的に調和しています。種をまくと,それはただ「その種類にしたがって」産出しますから,あなたはその法則の確実性に信頼を置いて畑に植え付けをすることができます。ネコの子はいつでもネコです。人間から生まれてくる子はいつでも人間です。色,大きさ,形などには多少の変異はありますが,それは常にそれぞれの種類の限界内にとどまっています。あなたはこれとは異なる例を実際にご覧になったことがあるでしょうか。ほかの人たちも,だれも見たことはありません。

進化の基盤ではない

29 フランスの一生物学者は突然変異について何と述べましたか。

29 結論は明瞭です。偶発性の遺伝子の変化がどれほど起きても,それがある種類の生物を別の種類の生物に変えることはできません。フランスの生物学者ジャン・ロスタンはかつてこう述べました。「自然選択の協力を得,生命の進化に要する長大な時間をかけたとしても,これら遺伝上の『過失』が,洗練された多様な構造と,驚嘆すべき『適応』とを備えたこの世界全体を築きえたとはどうしても考えられない」。30

30 一遺伝学者は突然変異について何と述べましたか。

30 同様に,遺伝学者のC・H・ワディントンも,突然変異に対する信仰についてこう述べました。「これは実際のところ,整然とした英語の文章14行を最初に取り,一時に一字ずつ変えて意味がなお通る部分だけを残してゆけば,やがてはシェークスピアの14行詩の一つができ上がる,といった理論である。……わたしにとって,これは気違いじみた論法である。もっとましな考え方があるはずだ」。31

31 突然変異が進化の原材料であるという信仰について一科学者は何と述べましたか。

31 ジョン・ムーア教授の言明した次のことは真実です。「厳密な検査と分析に基づけば,……遺伝子の突然変異が,自然選択を伴うすべての進化過程の原材料であるというような独断的主張は,神話的発言である」。32

[研究用の質問]

[99ページの拡大文]

「突然変異……は進化の基盤である」

[100ページの拡大文]

突然変異は遺伝の仕組みにおける「事故」に例えられている。しかし,事故は普通,益ではなく害をもたらす

[101ページの拡大文]

「突然変異は建設的というより破壊的な過程のように思われる」

[105ページの拡大文]

「1,000の突然変異が一つの実験体と結び付いたとしても,新しい種はやはり生じないであろう」

[107ページの拡大文]

「それは進化の証拠としてはしごく無意味である」

[107ページの拡大文]

突然変異の研究によって確証された音信は,生物はただ「その種類にしたがって」繁殖する,ということ

[108ページの拡大文]

「育種の過程は,進化論を裏付けるというより,それに反論しているように思われる」

[109ページの拡大文]

「何世代たってもブタはブタのままであり,カシの木はカシの木のままである」

[110ページの拡大文]

突然変異は「全体的な進化……の説明とはならない」

[110ページの拡大文]

「わたしにとって,これは気違いじみた論法である。もっとましな考え方があるはずだ」

[112,113ページの囲み記事/図版]

どちらが事実と適合するか

本書をここまで読んだ今,進化論と創造論のどちらが事実と適合しているかを考えてみるのは適切なことです。下の表は,進化論に基づく考え方と,創造を信ずる考え方,および,実際の世界に見いだされる事実を対比させています。

進化論が予告した事柄 創造論が予告した事柄 実際の世界に見られる事実

生命は偶然の化学進化に 生命はそれ以前の生命から(1)生命はそれ以前の

よって無生のものから進化 のみ生じる;その最初は, 生命からのみ生じる;

した(生物自然発生) 理知を持つ創造者によって(2)複雑な遺伝の暗号が

創造された 偶然に形成されることはない

化石は次のことを示して 化石は次のことを示して 化石は次のことを示して

いるはず: (1)単純な いるはず: (1)多くの いる: (1)多くの種類の

形態の生物が徐々に 種類の複雑な形態のものが 複雑な生物の突然の出現;

発生している;(2)過渡的 突然に出現している; (2)それぞれの新しい

な形態のものが,それ以前(2)主要な種類相互の 種類はそれ以前のものとは

のものとの間をつないで 間には隔たりがある; かけ離れている;

いる 間をつなぐものはない 間をつなぐものはない

新しい種類のものは徐々に 新しい種類の出現は 多くの変種はあるにしても,

生じる;形成の始まりで, 漸進的ではない;十分に 新しい種類の出現は

十分に整ってはいない骨や 整っていない骨や器官は 漸進的ではない;

器官の,過渡的な段階の なく,すべての部分は 形成途上の骨や器官はない

ものが色々ある 十分に形成されている

突然変異: その 突然変異は複雑な生物体に 小さな突然変異は有害,

最終的結果は有益;それに とって有害;何ら新しい 大きな変異は致命的;

よって新しい特色が ものを造り出すことはない 新しいものを造り出すことは

造られてゆく 決してない

文明の起源は漸進的 文明は人間と共に 文明は人間と共に

であり,粗野で,野獣的 始まった;初めから 出現している;どんな洞くつ

なものから始まった 相当進んだものである 住民も文明を有していた

言語は,単純な,動物の 言語は人間の歴史の 言語は人間の歴史の

うなり声から始まって, 初めからある;古代の 初めからある;古代の言語は

今日の複雑な形に進化した 言語は複雑で, 今日のものより入り組んで

よく整っている いる場合が多い

人間の出現は数百万年前 人間の出現は約6,000年前 文字による最古の記録は,

5,000年前まで

しかさかのぼれない

……論理的な結論

実際の世界に見られる事柄を,進化論が予告した事柄,また,創造論が予告した事柄と比較検討してみるとき,どちらの考え方が事実と適合し,どちらが事実と一致していないかは明らかではないでしょうか。わたしたちの周囲の,現在生きているものの世界からの証拠と,ずっと昔に生きていたものに関する,化石の記録からの証拠とは,共に同じ事柄,すなわち,生命は創造されたものであり,進化したものではない,ということを証ししています。

そうです,生命は,今日知られていない原始の“スープ”の中で始まったのではありません。人間は猿に似た先祖を経て今日の姿になったのではありません。いいえ,生物は,それぞれにはっきりと特徴のある種族として数多くのものが創造されたのです。個々の種族は自分の「種類」内では多様な変種を生みつつ繁殖できますが,それぞれの種類と種類の間を隔てる境界を越えることはできません。その境界は,生物の世界ではっきりと観察されるとおり,生殖の不能ということによって固く守られています。そして,種類と種類の間の区別は,独特な遺伝の機構によって保たれています。

しかし,創造者の存在を証しするものは,創造を信ずる考え方が予告した事柄と適合している事実だけではありません。この地上に,そうです,宇宙全体に見られる,驚嘆すべき設計と複雑性とについて考えてください。それらもまた,至高の理知者の存在を証ししています。以下の数章の中では,畏怖すべき宇宙から,顕微鏡下の世界の入り組んだ設計にまでいたる,そうした驚異の幾つかに注意を向けてみましょう。

[102ページの図版]

できの悪い仕事を何千回も行なってやっと一回の良い仕事をするような建築者がいる場合,あなたはその人を雇うだろうか

誤った判断を何千回もしてやっと一回の正しい判断をするような運転者がいる場合,あなたはその人の運転する車に乗りたいだろうか

誤った動作を何千回も行なってやっと一回の正しい動作をするような外科医がいる場合,あなたはその医師に手術をしてもらうだろうか

[103ページの図版]

ドブジャンスキー: 「ラジオの器械装置の中に棒を突き入れ,それによってその器械の働きが良くなるようなことはめったにない」

[104ページの図版]

ショウジョウバエの実験によって奇形の突然変異体が多く生み出されたが,それらはずっとショウジョウバエのままであった

正常なショウジョウバエ

突然変異体

[106ページの図版]

ペパードモスの色合いが変わったのは,進化ではなく,基本的な種類内での変種にすぎない

[108ページの図版]

犬の仲間には多くの変種があるが,犬は常に犬のままである

[109ページの図版]

人間の世界には多様な違いが見られる。しかし,人間はただ『人間という種類内で』繁殖する

[111ページの図版]

ガラパゴス諸島でダーウィンが観察したフィンチは依然フィンチのままである。したがって,彼が観察したのは,進化ではなく,ただの変種であった