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エホバの証人

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 その​信仰​に​倣う

「優れた婦人」

「優れた婦人」

ルツ​は,その​日​に​集め​て​積み上げ​た​大麦​の​束​の​そば​に​ひざまずい​て​い​ます。ベツレヘム​周辺​の​畑​は​夕暮れ​時​で,働き人​の​多く​はも​う,近く​の​山​の​上​に​ある​小さな​都市​の​門​へ​と​向かっ​て​い​ます。ルツ​は,朝​から​ずっ​と​働きづめ​だっ​た​の​で,疲れ切っ​て​いる​に​違いあり​ませ​ん。それでも​ま​だ,細い​棒​で​大麦​の​束​を​打っ​て​脱穀​し​て​い​ます。何はともあれ,良い​一日​でし​た。これ​ほど​の​収穫​が​ある​と​は​思っ​て​い​なかっ​た​の​ですから。

この​若い​やもめ​に​とっ​て,事態​は​ようやく​好転​し​よう​と​し​て​い​た​の​でしょ​う​か。ルツ​は,しゅうとめ​の​ナオミ​と​共​に​行く​こと​に​し,『ナオミ​に​堅く​付き,その​神​エホバ​を​自分​の​神​と​する』と​誓っ​て​い​まし​た。それで,自分​と​同じく​夫​に​先立た​れ​た​ナオミ​に​付き添っ​て,モアブ​から​ベツレヘム​に​やっ​て​来​た​の​です。モアブ​人​で​あっ​た​ルツ​は​すぐ,エホバ​の​律法​に,貧しい​イスラエル​人​や​異国​人​の​ため​の​実際​的​で​情け深い​規定​が​ある​こと​を​知り​まし​た。 * そして​今度​は,エホバ​の​民​の​中​に,律法​の​下​で​暮らし,それ​に​よっ​て​訓練​さ​れ​て​いる​ゆえ​に,霊的​な​事柄​を​重んじる​態度​や​親切​心​を​示す​人​たち​が​いる​の​を​見​た​の​で,心​の​傷​が​癒やさ​れる​思い​でし​た。

その​一​人​が,ボアズ​と​いう​裕福​な​年配​の​男性​で,ルツ​が​落ち穂​拾い​を​し​た​畑​の​所有​者​です。ルツ​は​今日,その​人​から​父親​の​よう​な​気遣い​を​示さ​れ,年老い​た​ナオミ​の​世話​を​し​て​いる​こと​や,まこと​の​神​エホバ​の​翼​の​下​に​避け所​を​求め​て​やっ​て​来​た​こと​を​褒め​られ​まし​た。その​親切​な​言葉​を​思い返す​と,つい​ほほえん​で​しまい​ます。―ルツ 2:11‐13

それでも​ルツ​は,今後​の​生活​の​こと​を​不安​に​思っ​た​か​も​しれ​ませ​ん。『夫​も​子ども​も​い​ない​貧しい​異国​人​の​身​で,この​先​ナオミ​と​二​人​で​どう​やっ​て​暮らし​て​ゆけ​ば​よい​の​だろ​う。落ち穂​拾い​だけ​で​やっ​て​ゆける​だろ​う​か。わたし​が​年老い​た​時​に​は​だれ​が​世話​を​し​て​くれる​の​だろ​う​か』。そう​考え​て​悩ん​で​い​た,と​いう​こと​も​あり得​ます。今日​の​経済​難​の​時代​に​おい​て​も,同様​の​思い煩い​と​闘っ​て​いる​人​は​少なく​あり​ませ​ん。わたしたち​は,ルツ​が​信仰​に​よっ​て​その​よう​な​苦難​を​どう​切り抜け​た​か​を​知る​とき,見倣う​べき​多く​の​こと​に​気づかさ​れ​ます。

 本当​の​家族​と​は

ルツ​は,自活​し​て​ナオミ​の​世話​を​する​ため,一生​懸命​に​働い​た

ルツ​は,脱穀​し​て​穀粒​を​集め終え,大麦​が​約​1​エファ,つまり​22​㍑​ほど​ある​こと​に​気づき​まし​た。重さ​は​14​㌔​に​も​なっ​た​こと​でしょ​う。ルツ​は​それ​を​布​に​包ん​で​頭​の​上​に​載せる​など​し​て,夕闇​が​迫る​中​を​ベツレヘム​へ​と​帰っ​て​行き​まし​た。―ルツ 2:17

ナオミ​は,愛する​嫁​ルツ​の​帰宅​を​喜ぶ​と​とも​に,ルツ​の​持ち帰っ​た​大量​の​大麦​に,驚き​の​声​を​上げ​た​こと​でしょ​う。ルツ​は,ボアズ​が​働き人​たち​に​出し​た​食事​の​うち​食べ​られ​なかっ​た​分​を​取っ​て​おい​た​の​で,二​人​は​それ​を​分け合っ​て​質素​な​食事​を​取り​まし​た。ナオミ​は​こう​言い​ます。「あなた​は​今日​どこ​で​落ち穂​を​拾っ​た​の​です​か。どこ​で​働い​た​の​です​か。あなた​の​こと​を​気​に​かけ​て​くださっ​た​方​に​祝福​が​あり​ます​よう​に」。(ルツ 2:19)ナオミ​は​よく​気​が​つく​人​でし​た。ルツ​が​食糧​を​どっさり​持ち帰っ​た​の​を​見​て,だれ​か​が​この​若い​やもめ​を​気遣い,親切​に​扱っ​て​くれ​た​こと​を​悟っ​た​の​です。

会話​が​弾み,ルツ​は​ナオミ​に,ボアズ​が​親切​に​し​て​くれ​た​こと​を​話し​まし​た。ナオミ​は​感激​し,「その​人​に​エホバ​から​祝福​が​あり​ます​よう​に。神​は​生き​て​いる​者​に​も​死ん​だ​者​に​も​ご自分​の​愛​ある​親切​を​お捨て​に​なら​なかっ​た​の​です」と​言い​ます。(ルツ 2:19,20)ナオミ​は,ボアズ​の​示し​た​親切​を​エホバ​から​の​もの​と​みなし​まし​た。エホバ​は​ご自分​の​僕​を​寛大​に​ならせる​方,また​親切​を​示し​た​民​に​報い​を​約束​な​さる​方​だ​から​です。 *箴言 19:17

ナオミ​は​ルツ​に,『ボアズ​の​言う​とおり​に​し,いつも​ボアズ​の​畑​で,その​家​の​若い​女​たち​の​そば​に​付い​て​落ち穂​を​拾い,刈り入れ​人​たち​から​嫌がらせ​を​され​ない​よう​に​し​なさい』と​勧め​ます。ルツ​は​その​アドバイス​に​従い​つつ,「ずっ​と​しゅうとめ​と​一緒​に​住ん​で」い​まし​た。(ルツ 2:22,23)こう​し​た​記述​に​も,ルツ​の​際立っ​た​特質 ― 忠節​な​愛 ― が​表われ​て​い​ます。その​模範​から,『自分​は​家族​の​絆​を​尊び,愛する​家族​を​忠節​に​支え,必要​に​応じ​て​助け​の​手​を​差し伸べ​て​いる​だろ​う​か』と​考え​させ​られる​でしょ​う。エホバ​は​その​よう​な​忠節​な​愛​を​見過ごし​たり​は​され​ませ​ん。

ルツ​と​ナオミ​は,助け合い,励まし合っ​た

ナオミ​と​ルツ​の​場合,二​人​だけ​で​は​家族​と​は​言え​ない​でしょ​う​か。世界​に​は,夫,妻,息子,娘,祖父母​など,それぞれ​の​役割​を​果たす​者​が​そろっ​て​い​なけれ​ば,“本当​の”家族​と​は​みなさ​ない​文化​圏​も​あり​ます。しかし,ナオミ​と​ルツ​の​例​に​見る​とおり,エホバ​の​僕​たち​は,それぞれ​の​役割​を​果たす​者​が​そろっ​て​い​なく​て​も,互い​に​心​を​開く​こと​に​より,温かく​親切​で​愛​の​あふれる​家庭​を​作る​こと​が​でき​ます。あなた​は​自分​の​家族​の​有り難み​を​認識​し​て​い​ます​か。イエス​は​弟子​たち​に,身寄り​の​ない​人​たち​に​とっ​て​は​クリスチャン​会衆​が​家族​と​なる​こと​を​思い起こさ​せ​まし​た。―マルコ 10:29,30

「わたしたち​を​買い戻す​人​の​ひとり​な​の​です」

ルツ​は,大麦​が​収穫​さ​れる​4​月​ごろ​から,小麦​が​収穫​さ​れる​6​月​ごろ​まで,ボアズ​の​畑​で​落ち穂​拾い​を​続け​まし​た。何​週​間​か​たつ​うち​に,ナオミ​は,愛する​嫁​の​ため​に​何​を​し​て​やれる​か,さらに​考え​た​に​違いあり​ませ​ん。かつて​モアブ​に​い​た​時​に​は,ルツ​に​再婚​相手​を​見つけ​て​やる​こと​など​でき​ない,と​思っ​て​い​まし​た。(ルツ 1:11‐13)しかし​今​で​は,その​考え​も​変わり​まし​た。それ​で​ルツ​に,「わたし​の​娘​よ,わたし​は​あなた​の​ため​に​休み場​を​探す​べき​で​は​ない​でしょ​う​か」と​話しかけ​ます。(ルツ 3:1)当時​は​親​が​子ども​に​配偶​者​を​見つけ​て​やる​の​が​普通​で​あり,ナオミ​に​とっ​て​ルツ​は​実​の​娘​も​同然​でし​た。ナオミ​は​ルツ​に「休み場」を​見つけ​て​やり​たい,つまり​夫​と​家庭​を​持たせ​安心​感​や​保護​を​得​られる​よう​に​し​て​やり​たい,と​思っ​て​い​た​の​です。それにしても,どう​し​よう​と​いう​の​でしょ​う​か。

ルツ​が​ボアズ​の​こと​を​初めて​話​し​た​時,ナオミ​は,「それ​は​わたしたち​と​縁続き​の​人​です。わたしたち​を​買い戻す​人​の​ひとり​な​の​です」と​言い​まし​た。(ルツ 2:20)どう​いう​意味​でしょ​う​か。神​が​イスラエル​に​お与え​ に​なっ​た​律法​に​は,貧困​や​死別​ゆえに​苦境​に​陥っ​た​家族​の​ため​の​愛​ある​規定​が​含ま​れ​て​い​まし​た。女性​が​子ども​を​産ま​ない​うち​に​やもめ​と​なる​の​は,とりわけ​悲痛​な​こと​でし​た。夫​の​名​つまり​家系​が​絶た​れ​て​しまう​から​です。しかし,神​の​律法​下​で​は,夫​の​兄弟​が​その​やもめ​と​結婚​し​て​子ども​を​もうけ,その​子​が​やもめ​の​亡き​夫​の​名​を​担い,家族​の​財産​を​受け継ぐ​こと​が​でき​まし​た。 *申命記 25:5‐7

ナオミ​は,これ​から​す​べき​こと​を​話し​て​聞か​せ​ます。若い​ルツ​は,それ​を​聞い​て,目​を​丸く​し​た​こと​でしょ​う。イスラエル​の​律法​は​まだ​よく​分から​なかっ​た​から​です。その​慣習​の​多く​も​全く​なじみ​の​ない​もの​だっ​た​に​違いあり​ませ​ん。それでも​ルツ​は,ナオミ​を​とても​尊敬​し​て​い​た​の​で,一言​も​聞き漏らす​まい​と​一心​に​耳​を​傾け​まし​た。ナオミ​の​言う​とおり​に​する​の​は,きまり​の​悪い,気恥ずかしい​こと​で,屈辱​的​な​結果​に​も​なり​かね​ない,と​思え​た​か​も​しれ​ませ​ん。しかし​ルツ​は,そう​する​こと​に​同意​し,温和​な​態度​で,「すべて​の​こと​を,おっしゃる​とおり​に​致し​ます」と​言い​まし​た。―ルツ 3:5

若い​人​は,年長​の​経験​豊か​な​人​の​アドバイス​に​聞き従う​の​を​難しく​感じる​こと​が​あり,『年長​の​人​に​は​若者​の​直面​し​て​いる​難しい​問題​を​あまり​理解​し​て​もらえ​ない』と​決めつけ​がち​です。しかし,ルツ​の​謙遜​さ​の​模範​から,『愛​の​動機​で​最善​を​願っ​て​くれ​て​いる​年長​の​人​の​知恵​に​聞き従う​なら​大きな​報い​が​得​られる』と​いう​こと​が​分かり​ます。ところで,ナオミ​は​どんな​アドバイス​を​与え​た​の​でしょ​う​か。そして​ルツ​は,その​とおり​に​する​こと​に​より​本当​に​報わ​れ​た​でしょ​う​か。

脱穀​場​にて

その​日​の​夕刻,ルツ​は​脱穀​場​へ​出かけ​て​行き​まし​ た。そこ​は​土​を​踏み固め​た​平ら​な​場所​で,農夫​たち​が​穀物​を​持っ​て​来​て​脱穀​と​あおり分け​を​する​所​です。大抵​は,午後​遅く​か​夕方​早く​に​風​が​強く​なる,丘​の​斜面​か​頂​に​あり​ます。働き人​たち​は,もみがら​や​藁​から​穀粒​を​分ける​ため​に,大きな​フォーク​か​シャベル​を​使っ​て,その​混ざっ​た​もの​を​放り​上げ,軽い​もみがら​が​風​で​吹き飛ばさ​れ,重い​穀粒​が​地面​に​落ちる​よう​に​する​の​です。

ルツ​は,その​仕事​を​夕方​まで​それ​と​なく​見守り​ます。ボアズ​の​指図​で,穀物​が​あおり分け​られ,穀粒​が​うずたかく​たまっ​て​ゆき​ます。作業​が​終わる​と,ボアズ​は​食事​を​し​て​満腹​に​なり,穀粒​の​山​の​そば​に​ごろり​と​横​に​なり​まし​た。当時​の​人​は​よく​そう​し​た​よう​です。貴重​な​収穫​物​を​盗人​や​略奪​者​から​守る​ため​だっ​た​の​でしょ​う。ボアズ​は​眠り​に​就い​た​よう​です。いよいよ​ナオミ​の​アドバイス​を​実行​に​移す​時​が​来​まし​た。

ルツ​は,どきどき​し​ながら,忍び寄り​ます。ボアズ​が​ぐっすり​眠っ​て​いる​の​が​分かり​ます。それで,ナオミ​から​言わ​れ​た​とおり,その​足もと​まで​行き,足もと​の​覆い​を​まく​って,そこ​に​横​に​なり​まし​た。じっ​と​し​た​まま,時​が​過ぎ​て​ゆき​ます。ルツ​に​とっ​て​は,果てしなく​長く​感じ​られ​た​に​違いあり​ませ​ん。真夜中​に​なっ​て​ついに,ボアズ​は​ごそごそ​と​体​を​動かし​始め​まし​た。寒さ​を​感じ​て​身震い​し,足​に​覆い​を​掛け直そ​う​と​し​た​の​でしょ​う,身​を​起こし​た​ところ,だれ​か​が​いる​の​に​気づき​ます。「見る​と,ひとり​の​女​が​自分​の​足もと​に​横たわっ​て​いる」では​あり​ませ​ん​か。―ルツ 3:8

「あなた​は​だれ​な​の​か」。そう​尋ね​られ​た​ルツ​は,恐らく​震え声​で,「あなた​の​奴隷​女​ルツ​で​ござい​ます。あなた​の​すそ​を​広げ​て​この​奴隷​女​を​覆っ​て​くださら​なけれ​ば​なり​ませ​ん。あなた​は​買い戻し​を​される​方​な​の​です​から」と​答え​まし​た。(ルツ 3:9)現代​の​注釈​者​たち​の​中​に​は,ルツ​の​言動​に​は​何らか​の​性的​な​含み​が​あっ​た,と​いう​主旨​の​こと​を​述べる​人​も​い​ます​が,それら​の​人​は​二つ​の​純然​たる​事実​を​無視​し​て​い​ます。第​一​に,ルツ​は,現代​人​に​は​理解​でき​ない,当時​の​慣習​に​従っ​て​行動​し​て​い​た,と​いう​点​です。ですから,その​行動​を,今日​の​堕落​し​た​道徳​規準​と​いう​歪ん​だ​レンズ​を​通し​て​見る​なら,誤解​し​て​しまう​か​も​しれ​ませ​ん。第​二​に,ボアズ​の​返答​から,ボアズ​が​ルツ​の​その​行為​を,貞潔​で​大いに​褒め​られる​べき​もの​と​みなし​た​こと​が​はっきり​分かる,と​いう​点​です。

ルツ​が​ボアズ​に​会い​に​行っ​た​動機​は,清く​て​利他​的​な​もの​だっ​た

ボアズ​は,ルツ​に​とっ​て​慰め​と​なっ​た​に​違いない,優しく​穏やか​な​口調​で,こう​語りかけ​まし​た。「娘​よ,あなた​が​エホバ​に​祝福​さ​れる​よう​に。あなた​は,自分​の​愛​ある​親切​を,初め​の​とき​に​まさっ​て​この​後​の​とき​に​いっそう​良く​示し​て​くれ​まし​た。立場​が​低かろ​う​と​も​富ん​で​い​よう​と​も,若い​者​たち​の​後​を​追お​う​と​は​し​なかっ​た​から​です」。(ルツ 3:10)「初め​の​とき」と​は,ルツ​が​忠節​な​愛​を​抱き,イスラエル​に​帰る​ナオミ​に​付き添い,その​世話​を​し​た​こと​で,「この​後​の​とき」と​は,今​し​て​いる​こと​でし​た。ボアズ​は,ルツ​の​よう​な​若い​女性​の​場合,裕福​な​男性​で​あれ​貧しい​男性​で​あれ,もっと​若い​人​を​夫​に​し​たい​と​思う​もの​だ,と​述べ​まし​た。しかし​ルツ​は,ナオミ​の​ため​だけ​で​なく,ナオミ​の​亡き​夫​の​ため​に​も​善​を​行ない,その​人​の​名​を​その​故国​に​残し​たい​と​思っ​て​い​た​の​です。ボアズ​が​この​若い​女性​の​利他​的​な​態度​に​心​を​動かさ​れ​た​の​も​当然​です。

ボアズ​は​さらに​こう​語りかけ​まし​た。「それ​で​今,わたし​の​娘​よ,恐れる​こと​は​あり​ませ​ん。あなた​の​言う​こと​は,すべて​その​とおり​し​て​あげ​ましょ​う。わたし​の​民​の​門​の​内​に​いる​者​は​皆,あなた​が​優れ​た​婦人​で​ある​こと​を​知っ​て​いる​から​です」。(ルツ 3:11)ボアズ​は,ルツ​と​の​結婚​の​見込み​を​うれしく​思い​まし​た。恐らく,買い戻し​人​に​なっ​て​ほしい​と​頼ま​れ​た​時​も,さほど​意外​に​は​思わ​なかっ​た​こと​でしょ​う。しかし​ボアズ​は,義​に​かなっ​た​人​で,自分​の​好み​だけ​に​基づい​て​行動​し​よう​と​は​し​ませ​ん。ルツ​に,『ナオミ​の​亡き​夫​の​親族​に​は​わたし​より​近縁​の​買い戻し​人​が​一​人​いる』と​告げ,まず​その​人​に​近づい​て,ルツ​の​夫​に​なる​機会​を​差し伸べる​こと​に​し​ます。

ボアズ​は​ルツ​に,再び​横​に​なっ​て​明け方​まで​休む​よう​勧め​まし​た。そうすれば,だれ​に​も​気づか​れ​ず​に​立ち去れ​ます。気づか​れる​なら,何​か​不​道徳​な​こと​が​行なわ​れ​た​の​で​は​ない​か​と​誤解​さ​れる​おそれ​も​あり​ます。ボアズ​は,自分​の​評判​だけ​で​なく​ルツ​の​評判​も​傷つか​ ない​よう​に​し​たい,と​思っ​た​の​です。それで,ルツ​は​再び​ボアズ​の​足もと​に​横​に​なり​ます。自分​の​願い​を​ボアズ​が​とても​親切​に​聞き入れ​て​くれ​た​の​で,ずっ​と​気持ち​が​楽​に​なっ​て​い​た​こと​でしょ​う。その​後,まだ​暗い​うち​に,ボアズ​は​ルツ​の​外套​に​相当​量​の​大麦​を​包ん​で​ルツ​に​持たせ,ベツレヘム​へ​と​送り出し​まし​た。

ルツ​は,その​民​の​間​で​自分​が「優れ​た​婦人」と​し​て​知ら​れ​て​いる,と​いう​ボアズ​の​言葉​を​思い巡らし​て,とても​うれしく​思っ​た​はず​です。ルツ​が​その​よう​な​評判​を​勝ち得​た​の​は,『ぜひ​エホバ​を​知っ​て​エホバ​に​お仕え​し​たい』と​思っ​て​い​た​から​に​違いあり​ませ​ん。また,ナオミ​と​その​民​に​対し​て​親切​心​や​気配り​を​示し,不​慣れ​な​風習​や​慣例​に​進ん​で​自分​を​合わせ​て​い​た​から​です。わたしたち​も,ルツ​の​信仰​に​倣っ​て,他​の​人​たち​に​深い​敬意​を​払い,その​風習​や​慣例​を​大いに​尊重​する​よう​努める​なら,優れ​た​人​と​いう​評判​を​勝ち得る​こと​が​できる​か​も​しれ​ませ​ん。

ルツ​は​休み場​を​得る

ナオミ​は,戻っ​て​来​た​ルツ​を​見​て,「わたし​の​娘​よ,あなた​は​だれ​な​の​でしょ​う​か」と​言い​ます。その​よう​に​尋ね​た​の​は,辺り​が​薄暗かっ​た​から​か​も​しれ​ませ​ん​が,ナオミ​は,ルツ​が​これ​まで​どおり​独り身​の​まま​か,それ​と​も​結婚​する​見込み​を​持て​た​の​か,と​いう​こと​も​知り​たかっ​た​の​でしょ​う。それ​で​ルツ​は​すぐ​に,自分​と​ボアズ​と​の​間​に​起き​た​事柄​の​一部始終​を​しゅうとめ​に​話し,ナオミ​に​渡す​よう​に​と​言わ​れ​た​寛大​な​大麦​の​贈り物​も​差し出し​まし​た。 *ルツ 3:16,17

ナオミ​は​思慮深く​も​ルツ​に,その​日​は​畑​に​落ち穂​拾い​に​行か​ず​に​家​に​い​て​静か​に​座っ​て​いる​よう​勧め, 「その​人​は,この​件​を​今日​済ませ​て​しまう​まで​は​休み​を​得​ない​こと​でしょ​う」と​断言​し​ます。―ルツ 3:18

ナオミ​が​ボアズ​に​つい​て​言っ​た​こと​は,まさに​その​とおり​でし​た。ボアズ​は,都市​の​門​の​所​に​行き​まし​た。都市​の​長老​たち​が​大抵​いつも​そこで​会合​する​から​です。そして,自分​より​近縁​の​人​が​通りかかる​の​を​待ち,証人​たち​の​前​で​その​人​を​呼び止め​て,買い戻し​人​と​なる​機会​が​ある​こと​に​気づか​せ,『その​ため​に​は​ルツ​と​結婚​する​必要​が​ある』と​述べ​ます。しかし​その​人​は,『そう​する​なら​自分​の​相続​分​を​損なう​こと​に​なる』と​言い,辞退​し​ます。それ​で​ボアズ​は,その​門​の​所​に​い​た​証人​たち​の​面前​で,『自分​が​買い戻し​人​と​なり,ナオミ​の​亡き​夫​エリメレク​の​地所​を​買い上げ,エリメレク​の​息子​マフロン​の​妻​で​あっ​た​やもめ​の​ルツ​と​結婚​する』と​述べ​ます。また,そうすれば「死ん​だ​人​の​名​を​その​相続​地​の​上​に​起こす」こと​も​できる,と​言明​し​ます。(ルツ 4:1‐10)ボアズ​は​本当​に​廉直​で​利他​的​な​人​でし​た。

こう​し​て,ボアズ​は​ルツ​と​結婚​し​まし​た。その​後「エホバ​は​彼女​を​身ごもら​せ,彼女​は​男​の​子​を​産ん​だ」と​記さ​れ​て​い​ます。ベツレヘム​の​女​たち​は​ナオミ​を​祝福​し,ルツ​を『ナオミ​に​とっ​て​7​人​の​息子​に​勝る​者』と​称賛​し​まし​た。わたしたち​も​知っ​て​いる​とおり,後​に,ルツ​の​産ん​だ​子​は​偉大​な​ダビデ​王​の​先祖​と​なり​まし​た。(ルツ 4:11‐22)その​ダビデ​が​イエス​・​キリスト​の​先祖​と​なっ​た​の​です。―マタイ 1:1 *

エホバ​は​ルツ​に,メシア​の​先祖​と​なる​特権​を​お与え​に​なっ​た

ルツ​は​豊か​に​祝福​さ​れ​まし​た。ナオミ​も​そう​です。ルツ​の​産ん​だ​子​を,自分​の​息子​で​ある​か​の​よう​に​育てる​こと​が​でき​た​から​です。この​二​人​の​女性​に​関する​物語​は,エホバ​神​が,だれ​に​せよ​自分​の​家族​に​必要​物​を​備える​ため​に​労苦​し​て​いる​人​や,ご自分​の​選ん​だ​民​と​共​に​忠節​に​ご自分​に​仕える​人​を​目​に​留め​て​くださっ​て​いる,と​いう​こと​を​鮮明​に​思い起こさ​せる​もの​と​なっ​て​い​ます。ルツ​と​同じ​よう​に,エホバ​と​の​関係​で​優れ​た​人物​だ​と​いう​評判​を​勝ち得る​忠実​な​人​に,エホバ​は​必ず​報い​を​お与え​に​なる​の​です。

^ 4節 「ものみの塔」2012​年​7​月​1​日​号​の「その​信仰​に​倣う ―『あなた​の​行か​れる​所​に​わたし​も​行き​ます』」と​いう​記事​を​ご覧​ください。

^ 10節 ナオミ​が​述べ​て​いる​よう​に,エホバ​の​ご親切​は,生き​て​いる​者​だけ​で​なく​死ん​だ​者​に​も​差し伸べ​られ​ます。ナオミ​は​夫​と​二​人​の​息子​を​亡くし​て​おり,ルツ​も​夫​を​亡くし​て​い​まし​た。それら​男性​3​人​は,ナオミ​や​ルツ​が​世話​さ​れる​こと​を​望ん​で​い​た​に​違いあり​ませ​ん。ですから,ナオミ​と​ルツ​に​対する​親切​は​みな,実​の​ところ,それら​亡くなっ​た​男性​たち​に​対する​親切​で​も​あっ​た,と​言え​ます。

^ 15節 その​よう​な​やもめ​と​結婚​する​権利​は,相続​権​の​場合​と​同じ​よう​に,まずは,亡くなっ​た​人​の​兄弟​たち​に,その​後,最も​近い​親族​の​男子​に​差し伸べ​られ​た​よう​です。―民数記 27:5‐11

^ 28節 ボアズ​は​ルツ​に​大麦​6​升​分​を​与え​まし​た​が,その​単位​は​明示​さ​れ​て​い​ませ​ん。6​と​いう​数​は,六​日​間​働い​た​後​に​安息​の​休み​が​来る​の​と​同じ​よう​に,ルツ​が​やもめ​と​し​て​労し​た​日々​も​間​も​なく​終わり,安定​し​た​家庭​と​夫​から​得​られる「休み」の​時​が​来る,と​いう​こと​を​暗に​示す​もの​だっ​た​の​か​も​しれ​ませ​ん。また,6​升 ― 恐らく​シャベル​で​6​杯​分 ― は,ルツ​の​運べる​だけ​の​量​に​すぎ​なかっ​た​と​も​考え​られ​ます。

^ 31節 ルツ​は,聖書​中​に​イエス​の​先祖​と​し​て​名前​を​挙げ​られ​て​いる​女性​5​人​の​うち​の​一​人​で,ボアズ​の​母親​ラハブ​も​その​一​人​です。(マタイ 1:3,5,6,16)ラハブ​も​ルツ​と​同じく,イスラエル​人​で​は​あり​ませ​ん​でし​た。