1‐3. ある​日​ペテロ​は,イエス​が​何​を​行なう​の​を​見​まし​た​か。その​夜,どんな​経験​を​し​まし​た​か。

ペテロ​は,力​を​こめ​て​櫂​を​漕ぎ​ながら​闇​の​向こう​に​目​を​凝らし​ます。あれ​は​東​の​水平線​上​の​かすか​な​光​だろ​う​か,もう​夜​が​明ける​の​だろ​う​か,と​思い​ます。舟​を​長​時間​漕い​で​いる​ため,背中​と​肩​の​筋肉​が​ひりひり​と​痛み​ます。激しい​風​で​髪​は​乱れ​ます。ガリラヤ​の​海​は​荒れ狂い,舟​の​へさき​に​波​が​容赦なく​打ちつけ​ます。冷たい​水しぶき​を​浴び​て​ずぶぬれ​に​なり​ながら​も​漕ぎ​続け​ます。

2 ペテロ​と​仲間​たち​は,イエス​を​残し​て​舟​で​出発​し​て​い​まし​た。彼ら​は​その​日,おなか​を​すか​せ​た​何千​人​も​の​群衆​に​イエス​が​わずか​な​パン​と​魚​で​食事​を​させる​の​を​見​まし​た。その​ため​群衆​は​イエス​を​王​に​し​よう​と​し​ます。しかし,イエス​は​政治​に​関与​する​つもり​は​なく,追随​者​に​も​政治​的​野望​を​抱か​せ​まい​と​思っ​て​い​まし​た。それ​で​群衆​を​避け,弟子​たち​を​強いて​舟​に​乗ら​せ​て​対岸​へ​向かわ​せ​ます。イエス​自身​は​祈り​を​する​ため​独り​で​山​に​上っ​て​行き​まし​た。―マル 6:35‐45。ヨハネ 6:14‐17を​読む。

3 弟子​たち​が​舟​で​出発​し​た​時,頭上​に​は​満月​に​近い​月​が​出​て​い​まし​た。その​月​も​西​の​水平線​に​向かっ​て​ゆっくり​沈も​う​と​し​て​い​ます。しかし,弟子​たち​の​舟​は​まだ​わずか​数​キロ​しか​進ん​で​い​ませ​ん。舟​を​操る​の​に​必死​な​弟子​たち​は,風​や​波​の​怒号​の​せい​で​互い​に​会話​も​でき​ない​ほど​です。ペテロ​は​おそらく,一​人​で​あれこれ​考え​て​い​た​こと​でしょ​う。

ペテロ​は​2​年​間​に​イエス​から​多く​の​こと​を​学ん​だ​が,学ぶ​べき​こと​は​まだまだ​あっ​た

4. ペテロ​は​どんな​努力​を​払い,わたしたち​の​模範​と​なっ​て​い​ます​か。

4 考える​こと​は​たくさん​あっ​た​はず​です。2​年​余り​前​に​ナザレ​の​イエス​に​出会っ​て​以来,いろいろ​な​こと​が​あり​まし​た。その​間​に​多く​の​こと​を​学び​まし​た​が,学ぶ​べき​こと​は​まだまだ​あり​ます。ペテロ​は​進ん​で​学び,疑い​や​恐れ​など​の​ 障害​を​克服​し​よう​と​努め​ます。その​点​で,わたしたち​の​倣う​べき​際立っ​た​模範​と​なっ​て​い​ます。では,詳しく​見​て​み​ましょ​う。

「わたしたち​は​メシア​を​見つけ​た」!

5,6. ペテロ​は​どんな​生活​を​し​て​い​まし​た​か。

5 ペテロ​は,イエス​に​会っ​た​日​の​こと​を​決して​忘れ​ない​でしょ​う。兄弟​の​アンデレ​から,「わたしたち​は​メシア​を​見つけ​た」と​いう​驚く​べき​知らせ​を​聞い​た​の​です。それ​が​転機​と​なり,ペテロ​の​人生​は​大きく​変わり​ます。―ヨハ 1:41

6 ペテロ​は​カペルナウム​に​住ん​で​い​まし​た。ガリラヤ​の​海​と​呼ば​れる​淡水​湖​の​北岸​の​都市​です。ペテロ​と​アンデレ,また​ゼベダイ​の​子​の​ヤコブ​と​ヨハネ​は,共同​で​漁業​を​営ん​で​い​まし​た。ペテロ​は​妻​に​加え,しゅうとめ​や​兄弟​の​アンデレ​と​も​一緒​に​暮らし​て​い​まし​た。その​よう​な​家族​を​漁業​で​養っ​て​ゆく​に​は​懸命​に​働か​なけれ​ば​なら​ず,体力​や​才覚​が​必要​だっ​た​に​違いあり​ませ​ん。夜遅く​まで​労苦​する​日​も​多かっ​た​でしょ​う。舟​と​舟​の​間​に​引き網​を​下ろし,何​で​も​網​に​掛かる​魚​を​引き上げる​の​です。また​日中​に​は,魚​を​分類​し​て​売り,網​を​繕っ​て​きれい​に​する​と​いう,骨​の​折れる​作業​を​し​た​こと​でしょ​う。

7. ペテロ​は​イエス​に​つい​て​どんな​こと​を​聞き​まし​た​か。それ​が​胸​の​躍る​知らせ​だっ​た​の​は​なぜ​です​か。

7 聖書​に​よれ​ば,アンデレ​は​バプテスト​の​ヨハネ​の​弟子​でし​た。アンデレ​は​自分​の​兄弟​ペテロ​に,ヨハネ​の​伝える​音信​に​つい​て​話​し​た​こと​でしょ​う。ペテロ​は​その​話​に​強い​興味​を​抱い​て​耳​を​傾け​た​に​違いあり​ませ​ん。ある​日​アンデレ​は,ヨハネ​が​ナザレ​の​イエス​を​指し​て,「見​なさい,神​の​子羊​です!」と​言う​の​を​聞き​ます。アンデレ​は​すぐ​に​イエス​の​追随​者​に​なり,はやる​思い​で​ペテロ​に,ついに​メシア​が​現われ​た​と​いう​胸​の​躍る​知らせ​を​伝え​ます。(ヨハ 1:35‐40)その​時​より​4,000​年​ほど​前​に​エデン​で​反逆​が​起き​た​あと,エホバ​神​は,人類​に​真​の​希望​を​与える​特別​な​人物​が​到来​する​こと​を​約束​なさい​まし​た。(創 3:15)アンデレ​が​会っ​た​の​は,まさに​その​救出​者,ほか​なら​ぬ​メシア​だっ​た​の​です。ペテロ​も​急い​で​イエス​に​会い​に​行き​ます。

8. イエス​が​ペテロ​に​授け​た​名前​に​は​どんな​意味​が​あり​ます​か。その​名前​に​疑問​を​持つ​人​が​いる​の​は​なぜ​です​か。

8 ペテロ​は​その​日​まで,シモン​または​シメオン​と​いう​名​で​知ら​れ​て​い​まし​た。しかし​イエス​は​彼​を​見​て​こう​言い​ます。「あなた​は​ヨハネ​の​子​シモン​です。あなた​は​ケファ(これ​は​ペテロ​と​訳さ​れ​て​いる)と​呼ば​れる​でしょ​う」。(ヨハ 1:42)「ケファ」は,「石」もしくは「岩」と​いう​意味​の​普通​名詞​です。イエス​の​言葉​に​は​預言​的​な​意味​が​ある​よう​です。イエス​は,ペテロ​が​岩​の​よう​な​人​に​なる​こと​を​予見​し​まし​た。つまり,キリスト​の​追随​者​たち​の​間​で,安定​し​た,揺るぎない, 頼もしい​存在​に​なる,と​いう​こと​です。ペテロ​は​自分​自身​を​その​よう​な​人​と​見​まし​た​か。おそらく,そう​は​見​て​い​なかっ​た​でしょ​う。今日,福音​書​を​読む​人​で​も,ペテロ​が​岩​の​よう​な​人​と​は​思え​ない,と​感じる​こと​が​あり​ます。聖書​に​描か​れ​て​いる​ペテロ​の​性格​は,不​安定​で​気まぐれ​で,ぐらつき​やすい​もの​で​は​ない​か,と​いう​意見​も​あり​ます。

9. エホバ​と​み子​は,何​に​目​を​向け​られ​ます​か。お二方​の​見方​を​信頼​する​必要​が​ある​の​は​なぜ​です​か。

9 ペテロ​に​は​確か​に​弱点​が​あり​まし​た。イエス​は,それ​に​気づい​て​い​なかっ​た​わけ​で​は​あり​ませ​ん。それでも,み父​エホバ​の​よう​に,いつも​人々​の​良い​面​に​目​を​向け​まし​た。ペテロ​に​多く​の​可能​性​を​見いだし,良い​特質​を​伸ばす​よう​助け​た​の​です。エホバ​と​み子​は,わたしたち​に​つい​て​も​良い​面​に​目​を​向け​て​ください​ます。自分​に​は​目​を​留め​て​いただける​よう​な​良い​点​は​あまり​な​い,と​思う​か​も​しれ​ませ​ん。そう​思う​と​し​て​も,お二方​の​見方​を​信頼​し,進ん​で​訓練​を​受け​て​形作っ​て​いただく​必要​が​あり​ます。ペテロ​は​そう​し​まし​た。―ヨハネ​第​一 3:19,20を​読む。

「恐れ​なく​て​も​よい」

10. ペテロ​は​どんな​こと​を​見​た​もの​と​思わ​れ​ます​か。それでも​何​に​戻っ​て​しまい​まし​た​か。

10 ペテロ​は​その​後​しばらく,イエス​の​伝道​旅行​に​同行​し​た​よう​です。カナ​で​の​婚宴​の​時​に​は,イエス​が​最初​の​奇跡​を​行ない,水​を​ぶどう​酒​に​変える​の​を​見​た​こと​でしょ​う。さらに​重要​な​こと​と​し​て,イエス​が​神​の​王国​に​関する,希望​に​満ち​た​素晴らしい​音信​を​伝える​の​を​聞き​まし​た。それでも​ペテロ​は,イエス​の​もと​を​離れ​て​漁業​に​戻り​ます。しかし​何​か​月​か​後,再び​イエス​に​会い​ます。その​時,全​時間​イエス​の​あと​に​従う​生き方​を​する​よう​招か​れ​ます。

11,12. (イ)ペテロ​は​前​の​晩,どんな​苦労​を​し​ながら​漁​を​し​まし​た​か。(ロ)ペテロ​は,イエス​の​話​を​聞き​ながら​どんな​こと​を​考え​た​か​も​しれ​ませ​ん​か。

11 ペテロ​は​前​の​晩,成果​を​得​られ​ず​に​夜通し​働い​て​い​まし​た。仲間​たち​と​網​を​何度​下ろし​て​も,引き上げ​て​みる​と​空​だっ​た​の​です。ペテロ​は​難局​を​打開​する​ため,自分​の​経験​や​才能​を​最大限​に​生かし,魚​を​見つけ​よう​と​湖​の​様々​な​ポイント​を​試し​た​に​違いあり​ませ​ん。多く​の​漁師​と​同じ​よう​に​ペテロ​も,暗い​水​の​中​を​見通し​て​魚群​を​探せ​ない​か,魚​を​うまく​網​の​中​に​誘い込む​方法​は​ない​か,と​思っ​た​こと​でしょ​う。しかし,それ​は​とうてい​無理​でし​た。ペテロ​に​とっ​て​漁​は​趣味​で​は​なく​仕事​で​あり,家族​の​生活​が​かかっ​て​い​まし​た。結局​ペテロ​は,むなし手​で​浜​に​戻り​ます。それでも,網​は​きれい​に​洗わ​なけれ​ば​なり​ませ​ん。ですから,イエス​が​近づい​て​来​た​時,ペテロ​は​忙しく​働い​て​い​た​の​です。

伝道​の​中心​テーマ​で​ある​神​の​王国​に​関する​イエス​の​話​に​引きつけ​られ​た

12 群衆​は​イエス​に​押し迫り,話​を​一言​も​聞き逃す​まい​と​し​て​い​まし​た。イエス​ は​人々​に​囲ま​れ​て​い​た​の​で,ペテロ​の​舟​に​乗り,舟​を​陸​から​少し​離す​よう​求め​ます。自分​の​声​が​水面​に​反響​し​て​はっきり​伝わる​よう​に​し,群衆​を​教え​まし​た。ペテロ​は,浜辺​に​いる​人々​と​同じ​よう​に,一心​に​耳​を​傾け​ます。伝道​の​中心​テーマ​で​ある​神​の​王国​に​関する​イエス​の​話​に​引きつけ​られ​ます。希望​の​この​音信​を​国じゅう​に​広める​キリスト​の​手助け​が​できる​と​し​たら,それ​は​実​に​大きな​特権​です。しかし,そう​する​の​は​現実​的​な​こと​でしょ​う​か。どう​やっ​て​生計​を​立てる​の​でしょ​う​か。長​時間​働い​て​も​魚​の​取れ​なかっ​た​昨夜​の​こと​が,思い​を​よぎっ​た​か​も​しれ​ませ​ん。―ルカ 5:1‐3

13,14. イエス​は​ペテロ​の​ため​に​どんな​奇跡​を​行ない​まし​た​か。ペテロ​は​どの​よう​に​反応​し​まし​た​か。

13 イエス​は​話​を​終える​と​ペテロ​に,「深い​ところ​に​乗り出し​なさい。そして​あなた方​は,網​を​下ろし​て​漁​を​し​なさい」と​言い​ます。ペテロ​は​非常​に​疑問​に​思い​ます。「先生,わたしたち​は​まる​一​晩​労苦​し​て​何​も​取れ​なかっ​た​の​です​が,仰せ​の​とおり​に​網​を​降ろし​て​み​ます」と​答え​ます。ペテロ​は,洗っ​た​ばかり​の​網​を​また​降ろし​たい​と​は​思わ​なかっ​た​でしょ​う。しかも​今​は,魚​が​餌​を​あさる​よう​な​時間​で​も​ない​の​です。それでも​イエス​の​指示​に​従い​ます。もう​一方​の​舟​に​いる​仲間​に​も​付い​て​くる​よう​合図​し​た​こと​でしょ​う。―ルカ 5:4,5

14 ペテロ​は​網​を​引き​始める​と,予想​外​に​重い​こと​に​気づき​ます。半信半疑​です​が,いっそう​力​を​こめ​て​引っ張り​ます。やがて​網​の​中​に​大量​の​魚​が​うごめく​の​を​目​に​し​ます。もう​一方​の​舟​に​いる​仲間​に​身ぶり​で​必死​に​合図​し,助け​を​求め​ます。仲間​が​来​て​間​も​なく,一​そう​の​舟​で​は​魚​を​載せきれ​ない​こと​が​明らか​に​なり​ます。両方​の​舟​に​魚​を​載せ​ます​が,それでも​多すぎ​て​舟​は​沈み​始め​ます。ペテロ​は,すっかり​驚き​ます。以前​に​も​キリスト​の​力​の​働き​を​見​まし​た​が,今回​の​奇跡​は​直接​自分​に​関係​する​もの​でし​た。目​の​前​に​いる​方​は,魚​を​網​に​入ら​せる​こと​さえ​できる​の​です。ペテロ​は​恐ろしく​なり,ひざまずい​て,「私​から​お離れ​ください。私​は​罪深い​男​な​の​です,主​よ」と​言い​ます。自分​の​よう​な​者​が,神​の​力​を​この​よう​に​行使​できる​方​と​親しく​する​の​は​ふさわしく​ない,と​思っ​た​の​でしょ​う。―ルカ 5:6‐9を​読む。

「私​は​罪深い​男​な​の​です,主​よ」

15. イエス​は​ペテロ​に,疑っ​たり​恐れ​たり​する​必要​の​ない​こと​を​どの​よう​に​教え​まし​た​か。

15 イエス​は​親切​に​こう​言い​ます。「恐れ​なく​て​も​よい。今​から​後,あなた​は​人​を​生き​ながら​捕る​の​です」。(ルカ 5:10,11)今​は,疑い​や​恐れ​を​抱く​べき​時​で​は​あり​ませ​ん。漁業​を​せ​ず​に​生活​し​て​ゆける​の​か​と​疑っ​たり,弱点​や​不​十分​ な​ところ​の​多い​自分​が​奉仕​し​て​ゆける​の​か​と​恐れ​たり​する​必要​は​ない​の​です。イエス​に​は,なす​べき​壮大​な​業​が​あり​まし​た。歴史​を​変える​宣教​奉仕​です。イエス​が​仕え​て​いる​神​は,「豊か​に​許し​て​くださる」方​です。(イザ 55:7)ペテロ​の​身体​面​や​霊的​な​面​で​の​必要​は,エホバ​が​顧み​て​くださる​の​です。―マタ 6:33

16. ペテロ​と​ヤコブ​と​ヨハネ​は,イエス​の​招き​に​どの​よう​に​応じ​まし​た​か。それ​は​なぜ​最善​の​決定​でし​た​か。

16 ペテロ​と​ヤコブ​と​ヨハネ​は​すぐ​に​応じ​ます。「彼ら​は​舟​を​陸​に​戻し,一切​の​もの​を​捨て​て​彼​の​あと​に​従っ​た」の​です。(ルカ 5:11)ペテロ​は​イエス​に,また​イエス​を​遣わし​た​方​に​信仰​を​置き​まし​た。それ​は​最善​の​決定​でし​た。今日​の​クリスチャン​も,疑い​や​恐れ​を​克服​し​て​神​に​仕える​道​を​選び,信仰​を​示し​て​い​ます。エホバ​へ​の​その​よう​な​信頼​は​決して​裏切ら​れ​ませ​ん。―詩 22:4,5

 「なぜ​疑い​に​負け​た​の​です​か」

17. ペテロ​は,イエス​と​出会っ​て​から​の​2​年​間​の​どんな​出来事​を​思い巡らし​て​い​た​か​も​しれ​ませ​ん​か。

17 ペテロ​が​イエス​と​出会っ​て​から​2​年​ほど​後​の​こと​です。この​章​の​冒頭​で​述べ​た​よう​に,風​の​強い​その​夜,ペテロ​は​ガリラヤ​の​海​で​舟​を​漕ぎ​続け​て​い​まし​た。その​時​ペテロ​が​どんな​こと​を​考え​て​い​た​の​か​は​分かり​ませ​ん。ですが,思い巡らせる​事柄​は​たくさん​あっ​た​でしょ​う。イエス​は,ペテロ​の​しゅうとめ​を​いやし,山上​の​垂訓​を​行ない​まし​た。また,教え​と​強力​な​業​に​よっ​て,自分​が​エホバ​の​お選び​に​なっ​た​者​つまり​メシア​で​ある​こと​を​幾​度​も​実証​し​て​い​まし​た。月日​が​たつ​うち​に,ペテロ​の​弱点,例えば​とっさ​に​恐れ​や​疑い​に​屈する​傾向​は,ある​程度​和らい​で​い​た​に​違いあり​ませ​ん。イエス​は​ペテロ​を​12​使徒​の​一​人​に​選ぶ​こと​さえ​し​た​の​です。と​は​いえ,ペテロ​は​恐れ​や​疑い​を​まだ​十分​に​は​克服​し​て​い​ませ​ん。もう​すぐ,それ​を​思い知らさ​れる​こと​に​なり​ます。

18,19. (イ)ガリラヤ​の​海​で​ペテロ​は​何​を​見​まし​た​か。(ロ)イエス​は,ペテロ​の​求め​に​どう​応じ​まし​た​か。

18 その​夜​の​第​四​見張り​時,つまり​午前​3​時​から​日​の​出​まで​の​間​の​こと,ペテロ​は​突然​漕ぐ​の​を​やめ,顔​を​上げ​ます。波​の​向こう​に​何​か​が​動い​て​い​ます。月​明かり​に​照らさ​れ​た​波​しぶき​でしょ​う​か。いいえ,何​か​が​まっすぐ​立っ​て​い​ます。なんと,人​が​水面​を​歩い​て​いる​の​です。こちら​に​近づい​て​来​まし​た​が,そば​を​通り過ぎ​て​行く​様子​です。弟子​たち​は​怖く​なり​ます。何​か​の​幻影​だ​と​思っ​た​の​です。しかし​その​人​は,「勇気​を​出し​なさい,わたし​です。恐れる​こと​は​あり​ませ​ん」と​言い​ます。イエス​だっ​た​の​です。―マタ 14:25‐28

19 ペテロ​は,「主​よ,あなた​でし​たら,水​の​上​を​歩い​て​みもと​に​来る​よう​わたし​に​お命じ​ください」と​言い​ます。その​反応​は​勇敢​な​もの​でし​た。ペテロ​は,この​特異​な​奇跡​に​胸​を​躍らせ,自分​の​信仰​を​強め​たい​と​考え​ます。自分​も​同じ​よう​に​歩き​たい​と​思っ​た​の​です。イエス​は​親切​に​も​ペテロ​を​招き​ます。ペテロ​は​舟べり​を​乗り越え,波打つ​湖面​に​足​を​踏み出し​ます。すると,なんと​水面​は​しっかり​し​て​い​て,水​の​上​に​立つ​こと​が​でき​た​の​です。ペテロ​の​感動​を​想像​でき​ます​か。イエス​の​方​へ​歩い​て​行く​ペテロ​は,驚嘆​の​念​に​満たさ​れ​た​こと​でしょ​う。ところが,すぐ​に​別​の​感情​が​わき上がっ​て​き​ます。―マタイ 14:29を​読む。

「風​あらし​を​見​て​怖く​な(っ​た)」

20. (イ)ペテロ​は​どの​よう​に​注意​を​そらさ​れ​て​しまい​まし​た​か。どんな​結果​に​なり​まし​た​か。(ロ)イエス​は​ペテロ​に​どんな​教訓​を​銘記​さ​せ​まし​た​か。

20 ペテロ​は,ずっ​と​イエス​に​注意​を​向け​て​いる​べき​でし​た。イエス​が​エホバ​の​力​を​用い,風​に​揺れる​波​の​上​に​ペテロ​を​立た​せ​て​い​た​の​です。イエス​は,自分​に​対する​ペテロ​の​信仰​に​こたえ​て​そう​し​て​い​まし​た。ところが,ペテロ​は​注意​ を​そらさ​れ​て​しまい​ます。「風​あらし​を​見​て​怖く​なり」まし​た。波​が​舟​に​当たっ​て​しぶき​を​上げる​様子​に​目​を​向け​て​しまい,パニック​に​陥り​ます。たぶん,自分​が​湖​に​沈ん​で​溺れる​ところ​を​想像​し​た​の​でしょ​う。恐れ​の​気持ち​が​強まる​と,信仰​は​弱まり​まし​た。ぐらつか​ない​人​と​見込ま​れ​て“岩”と​名づけ​られ​て​い​た​の​に,信仰​が​揺らい​で​石​の​よう​に​沈み​始め​た​の​です。ペテロ​は​泳ぎ​が​上手​でし​た​が,泳ご​う​と​も​せ​ず,「主​よ,お救い​ください!」と​叫び​ます。イエス​は​ペテロ​の​手​を​つか​ん​で​引き上げ​ます。そして​まだ​水面​に​いる​時,ペテロ​に​大切​な​教訓​を​銘記​さ​せ,「信仰​の​少ない​人​よ,なぜ​疑い​に​負け​た​の​です​か」と​言い​ます。―マタ 14:30,31

21. 疑い​は​なぜ​危険​です​か。疑い​と​闘う​ため​に​何​が​でき​ます​か。

21 「疑い​に​負け​た」と​いう​表現​は,実​に​適切​です。疑い​は,強い​破壊​的​な​力​と​なり​得​ます。疑い​に​屈する​と,信仰​を​むしばま​れ​て​霊的​に​沈みかね​ませ​ん。ですから,疑い​に​負け​ない​よう​懸命​に​闘わ​なけれ​ば​なり​ませ​ん。どの​よう​に​です​か。ふさわしい​事柄​に​注意​を​集中​し​続ける​の​です。恐れ​を​抱か​せる​事柄​や​気落ち​さ​せる​事柄,エホバ​と​み子​から​注意​を​そらす​事柄​を​考え​続ける​なら,疑い​は​募っ​て​ゆく​こと​でしょ​う。むしろ,エホバ​と​み子​に​注意​を​向け,お二方​が​自分​たち​を​愛する​人々​の​ため​に​これ​まで​行なっ​た​事柄​や,いま​行なっ​て​いる​事柄,これ​から​行なう​事柄​に​注意​を​集中​し​ましょ​う。そうすれば,信仰​を​むしばむ​疑い​を​はねのける​こと​が​でき​ます。

22. ペテロ​の​信仰​に​倣う​べき​な​の​は​なぜ​です​か。

22 ペテロ​が​イエス​の​あと​に​付い​て​舟​に​戻る​と,嵐​は​収まり,ガリラヤ​の​海​は​静けさ​を​取り戻し​ます。ペテロ​は​仲間​の​弟子​たち​と​共​に,「確か​に​あなた​は​神​の​子​です」と​言明​し​まし​た。(マタ 14:33)湖​に​夜明け​が​訪れ​た​時,ペテロ​は​晴れやか​な​気持ち​に​なっ​て​い​た​でしょ​う。疑い​や​恐れ​を​退け​た​の​です。確か​に,イエス​が​予見​し​た​とおり​岩​の​よう​な​クリスチャン​に​なる​に​は,まだ​多く​の​点​で​変化​を​遂げ​なけれ​ば​なり​ませ​ん。それでも​努力​を​続け​て​成長​し​て​ゆく​こと​を​決意​し​て​い​まし​た。あなた​も,そう​する​こと​を​決意​し​て​い​ます​か。ぜひとも​ペテロ​の​信仰​に​倣い​ましょ​う。