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 第​19​章

守り,養い,務めを果たした人

守り,養い,務めを果たした人

1,2. (イ)ヨセフ​と​その​家族​は​どの​よう​な​変化​に​直面​し​まし​た​か。(ロ)ヨセフ​は​妻​に,どんな​悪い​知らせ​を​伝え​なけれ​ば​なり​ませ​ん​でし​た​か。

ヨセフ​は,頑丈​な​ろば​の​背​に​荷物​を​もう​一つ​載せ​ます。夜中​の​ベツレヘム​の​村​で​の​こと,辺り​を​見回し,ろば​の​脇腹​を​軽く​たたき​ます。これ​から​の​長旅​に​つい​て​考え​て​いる​の​でしょ​う。エジプト​へ​向かう​の​です。言語​も​習慣​も​違う​異国​の​地​で,自分​たち​家族​は​大きな​変化​に​適応​できる​の​だろ​う​か,と​思い​ます。

2 ヨセフ​に​とっ​て,愛する​妻​マリア​に​良く​ない​知らせ​を​伝える​の​は​簡単​で​は​あり​ませ​ん​でし​た。しかし​覚悟​を​決め​て,自分​の​見​た​夢​に​つい​て​話​し​まし​た。夢​の​中​で​み使い​が​神​から​の​音信​を​伝え,ヘロデ​王​が​幼子​イエス​を​殺そ​う​と​し​て​いる,と​告げ​た​の​です。すぐ​に​逃げ​なけれ​ば​なり​ませ​ん。マタイ 2:13,14を​読む。マリア​は​ひどく​心​を​痛め​まし​た。いったい​どうして​何​の​罪​も​ない​この​子​を​殺そ​う​など​と​思う​の​でしょ​う​か。マリア​も​ヨセフ​も​理解​でき​ませ​ん。それでも,エホバ​を​信頼​し​て​旅​の​支度​を​し​まし​た。

3. ヨセフ​と​その​家族​は​どの​よう​に​し​て​ベツレヘム​を​去り​まし​た​か。(挿絵​を​参照。)

3 ベツレヘム​の​人々​は,こう​し​た​状況​に​つい​て​何​も​知ら​ず​に​寝静まっ​て​い​ます。暗闇​の​中,ヨセフ​は​マリア​と​イエス​を​連れ​て​村​を​そっと​抜け出し​ます。南​へ​向かう​うち​に,東​の​空​が​白み​始め​ます。ヨセフ​は​この​先​の​こと​を​いろいろ​考え​て​い​た​に​違いあり​ませ​ん。一介​の​大工​に​過ぎ​ない​自分​が,家族​を​非常​に​強力​な​敵​たち​から​守れる​だろ​う​か。妻子​を​ずっ​と​養っ​て​ゆける​だろ​う​か。この​特別​な​子ども​を​養育​する​と​いう,エホバ​神​から​の​重要​な​務め​を​しっかり​果たせる​だろ​う​か。ヨセフ​の​前​に​は​大きな​難題​が​幾つ​も​あり​ます。ヨセフ​は​それぞれ​の​難題​に​どの​よう​に​取り組ん​だ​でしょ​う​か。その​点​を​考える​なら,父親​で​ある​人​たち​は​もちろん,わたしたち​すべて​が​ヨセフ​の​信仰​に​倣う​べき​理由​が​分かる​でしょ​う。

ヨセフ​は​家族​を​守っ​た

4,5. (イ)どの​よう​な​いきさつ​で​ヨセフ​の​人生​は​大きく​変化​し​まし​た​か。(ロ)み使い​は,ヨセフ​が​重要​な​務め​を​引き受ける​よう​どの​よう​に​励まし​まし​た​か。

4 それ​より​1​年​以上​前,故郷​の​ナザレ​で​の​こと​です。ヘリ​の​娘​マリア​と​婚約​ し​て​い​た​ヨセフ​は,人生​の​大きな​変化​に​直面​し​ます。ヨセフ​は,マリア​が​純潔​で​忠実​な​女性​で​ある​と​分かっ​て​い​まし​た​が,その​マリア​の​妊娠​に​つい​て​知っ​た​の​です。それで,マリア​を​悪い​うわさ​から​守る​ため,ひそか​に​離婚​し​よう​と​思い​まし​た。 * しかし,夢​の​中​で​ひとり​の​み使い​から​語りかけ​られ,マリア​の​妊娠​が​エホバ​の​聖霊​に​よる​もの​で​あり,生ま​れ​て​くる​男​の​子​は「自分​の​民​を​その​罪​から​救う」,と​いう​こと​を​知らさ​れ​まし​た。さらに,「あなた​の​妻​マリア​を​迎え入れる​こと​を​恐れ​て​は​なら​ない」と​も​言わ​れ​ます。―マタ 1:18‐21

5 義​に​かな​い​従順​な​人​で​ある​ヨセフ​は,その​とおり​に​し​ます。極めて​重要​な​務め,すなわち​自分​の​実​の​子​で​は​なく,神​の​とりわけ​大切​な​子​を​養い育てる​と​いう​務め​を​引き受け​た​の​です。後​に​ヨセフ​は,皇帝​の​布告​に​従っ​て​登録​を​する​ため,妊娠​中​の​妻​と​共​に​ベツレヘム​に​行き,そこで​子ども​が​生ま​れ​ます。

6‐8. (イ)どんな​こと​が​あっ​て,ヨセフ​と​家族​の​生活​は​再び​変化​し​まし​た​か。(ロ)どんな​事実​を​考える​と,サタン​が“星”を​差し向け​た​と​言え​ます​か。(脚注​を​参照。)

6 ヨセフ​は​家族​を​連れ​て​ナザレ​に​戻る​の​で​は​なく,ベツレヘム​に​そのまま​住む​こと​に​し​ます。ベツレヘム​は​エルサレム​から​約​10​㌔​の​ところ​に​あり​ます。貧しい​と​は​いえ,ヨセフ​は​マリア​と​イエス​を​困窮​から​守る​ため​に,できる​限り​の​こと​を​し​ます。やがて,この​家族​は​質素​な​家​で​暮らす​よう​に​なり​ます。その​後,イエス​が​もう​赤子​で​は​なく​幼子​に​なり,たぶん​1​歳​を​過ぎ​て​い​た​ころ,一家​の​生活​は​またもや​突然​に​変化​し​ます。

7 占星​術​者​たち​の​一行​が​東方​から,おそらく​遠方​の​バビロン​から,一つ​の“星”の​あと​に​付い​て​ヨセフ​と​マリア​の​家​に​やっ​て​来​ます。ユダヤ​人​の​王​と​なる​ため​に​生ま​れ​た​子ども​を​捜し​て​い​て,非常​に​恭しい​態度​を​取り​まし​た。

8 その​占星​術​者​たち​は,気づい​て​い​た​か​どう​か​は​ともかく,幼い​イエス​の​命​を​大きな​危険​に​さらし​て​い​まし​た。“星”は​彼ら​を​直接​ベツレヘム​に​導く​の​で​は​なく,まず​エルサレム​に​行か​せ​ます。 * 彼ら​は​そこで​邪悪​な​ヘロデ​王​に,ユダヤ​人​の​王​と​なる​子ども​を​捜し​て​いる​と​話し​た​ため,王​の​ねたみ​と​怒り​を​燃え上がら​せ​て​しまっ​た​の​です。

9‐11. (イ)ヘロデ​や​サタン​より​も​強力​な​力​が​働い​て​い​た,と​言える​の​は​なぜ​です​か。(ロ)エジプト​へ​の​旅​は,聖書​外典​の​神話​に​記さ​れ​て​いる​もの​と​は​どの​よう​に​異なっ​て​い​まし​た​か。

9 幸い,ヘロデ​や​サタン​より​も​強力​な​力​が​働い​て​い​まし​た。なぜ​そう​言え​ます​か。占星​術​者​たち​は​イエス​の​家​に​着き,母親​と​共​に​いる​イエス​を​見る​と,贈り物​を​取り出し,何​の​見返り​も​求め​ませ​ん。ヨセフ​と​マリア​は​不思議​に​思っ​た​に​ 違いあり​ませ​ん。「金​・​乳香​・​没薬」と​いう​貴重​な​品​を​突然​所有​する​よう​に​なっ​た​の​です。占星​術​者​たち​は,戻っ​て​子ども​の​居​場所​を​ヘロデ​王​に​話す​つもり​でし​た​が,エホバ​が​事態​に​介入​さ​れ​ます。彼ら​に​夢​の​中​で,別​の​道​を​通っ​て​自分​たち​の​国​に​帰る​よう​指示​なさい​ます。―マタイ 2:1‐12を​読む。

10 占星​術​者​たち​が​去っ​た​すぐ​後,ヨセフ​は​エホバ​の​み使い​から​次​の​警告​を​受け​ます。「起き​て,幼子​と​その​母​を​連れ​て​エジプト​に​逃げ,わたし​が​知らせる​まで​そこ​に​とどまっ​て​い​なさい。ヘロデ​が​まさに,この​幼子​を​捜し​て​滅ぼそ​う​と​し​て​いる​から​で​ある」。(マタ 2:13)冒頭​で​述べ​た​とおり,ヨセフ​は​早速​従い​ます。我​が​子​の​安全​を​最​優先​に​し,家族​を​連れ​て​エジプト​へ​向かっ​た​の​です。異教​の​占星​術​者​たち​から​非常​に​高価​な​贈り物​を​もらっ​て​い​た​の​で,その​後​の​生活​費​に​充てる​こと​が​でき​た​でしょ​う。

ヨセフ​は​子ども​を​守る​ため​に​犠牲​を​払い,果敢​に​行動​し​た

11 後​に​記さ​れ​た​聖書​外典​の​神話​や​伝説​で​は,エジプト​へ​の​この​旅​が​空想​的​に​描か​れ​て​い​ます。幼い​イエス​が​奇跡​に​よっ​て​旅​を​短く​し,盗賊​を​無力​に​し,ナツメヤシ​の​木​を​母​マリア​の​前​に​かがま​せ​て​実​を​取れる​よう​に​し​た,と​され​て​い​ます。 * しかし​実際​に​は,見知ら​ぬ​地​へ​の​厳しい​長旅​でし​た。

ヨセフ​は​家族​の​ため​に​自分​の​安楽​を​犠牲​に​し​た

12. 危険​に​満ち​た​今​の​世界​で​子育て​を​し​て​いる​人​たち​は,ヨセフ​から​どんな​こと​を​学べ​ます​か。

12 親​で​ある​人​は​ヨセフ​から​多く​を​学べ​ます。ヨセフ​は​家族​を​危険​から​守る​ため,進ん​で​仕事​を​後回し​に​し,自分​の​安楽​も​犠牲​に​し​まし​た。家族​を​エホバ​から​託さ​れ​た​大切​な​もの​と​見​て​い​た​の​です。今日​の​親​たち​は,危険​に​満ち​た​世界​で​子ども​を​育て​て​い​ます。子ども​を​危険​に​さらし,腐敗​さ​せ,破滅​させ​かね​ない​力​が,至る所​に​働い​て​い​ます。ヨセフ​の​よう​に​果敢​な​行動​を​取り,そう​し​た​影響​力​から​子ども​を​守ろ​う​と​奮闘​する​父親​や​母親​は,本当​に​称賛​に​値し​ます。

ヨセフ​は​家族​を​養っ​た

13,14. ヨセフ​と​マリア​は​どんな​いきさつ​で,ナザレ​で​子ども​たち​を​育てる​こと​に​なり​まし​た​か。

13 ヨセフ​の​家族​は,エジプト​に​長く​は​とどまら​なかっ​た​よう​です。しばらく​し​て​み使い​が​ヨセフ​に,ヘロデ​が​死ん​だ​こと​を​知らせ​た​から​です。ヨセフ​は​家族​を​連れ​て​故国​に​戻り​ます。古代​の​預言​に,エホバ​は​ご自分​の​子​を「エジプト​から」呼び出す,と​あり​まし​た。(マタ 2:15)ヨセフ​は​その​預言​の​成就​に​寄与​し​まし​た。と​は​いえ,今度​は​家族​を​どこ​に​連れ​て​行く​の​でしょ​う​か。

 14 ヨセフ​は​用心深い​人​でし​た。賢明​に​も,ヘロデ​の​後継​者​アケラオ​を​恐れ​ます。アケラオ​も​悪らつ​で​残忍​な​人物​だっ​た​の​です。ヨセフ​は​神​の​導き​に​従い,家族​を​連れ​て​北​へ​と​向かい​ます。悪巧み​に​陥りかね​ない​エルサレム​を​避け,ガリラヤ​地方​の​郷里​ナザレ​に​戻り​ます。その​ナザレ​で​ヨセフ​と​マリア​は​子ども​たち​を​育てる​こと​に​なり​ます。―マタイ 2:19‐23を​読む。

15,16. ヨセフ​は​どんな​作業​を​し​まし​た​か。どんな​道具​を​使っ​た​か​も​しれ​ませ​ん​か。

15 一家​は​簡素​な​生活​を​送り​ます​が,決して​楽​な​暮らし​で​は​あり​ませ​ん。聖書​で​ヨセフ​は「大工」と​呼ば​れ​て​い​ます。木​を​扱う​様々​な​作業​を​包含​する​語​です。例えば,木​を​切り倒し,運び,乾燥​さ​せ​て,家​や​舟,小さな​橋,荷車,車輪,くびき,農具​類​を​作る​と​いっ​た​作業​です。(マタ 13:55)それ​は​きつい​肉体​労働​でし​た。聖書​時代​の​大工​は​多く​の​場合,簡素​な​家​の​戸口​付近​か,隣接​し​た​作業​場​で​働き​まし​た。

16 ヨセフ​は​いろいろ​な​道具​を​使い​まし​た。父親​から​受け継い​だ​道具​も​あっ​た​こと​でしょ​う。差し金,下げ振り,チョークライン,斧,のこぎり,手斧,金槌​や​木槌,のみ,弓​を​前後​に​引い​て​回転​さ​せる​錐,様々​な​接着​剤​など​を​使っ​た​か​も​しれ​ませ​ん。釘​も,高価​だっ​た​と​は​いえ,幾らか​使っ​た​もの​と​思わ​れ​ます。

17,18. (イ)イエス​は​ヨセフ​から​どんな​こと​を​学び​まし​た​か。(ロ)ヨセフ​が​ますます​懸命​に​働く​必要​が​あっ​た​の​は​なぜ​です​か。

17 少年​イエス​が​養父​ヨセフ​の​働く​姿​を​見​て​いる​ところ​を​想像​し​て​ください。目​を​丸く​し​て,ヨセフ​の​動作​一つ​一つ​を​見つめ​ます。がっしり​し​た​広い​肩​と​たくましい​腕,鮮やか​な​手さばき​に​目​を​奪わ​れ,瞳​に​あふれる​知性​に​引きつけ​られ​た​に​違いあり​ませ​ん。おそらく​ヨセフ​は​イエス​に,乾燥​さ​せ​た​魚​の​皮​で​木材​の​表面​を​こす​って​滑らか​に​する,と​いっ​た​簡単​な​作業​を​行なっ​て​見せ​た​こと​でしょ​う。また,使用​する​様々​な​木材,例えば​エジプトイチジク,カシ,オリーブ​など​の​違い​に​つい​て​教え​た​か​も​しれ​ませ​ん。

ヨセフ​は​息子​に,大工​に​なる​ため​の​訓練​を​与え​た

18 この​よう​に​イエス​は,ヨセフ​の​力強い​手​が​木​を​切り倒し,梁材​を​切り出し,木材​を​たたい​て​接合​する​の​を​見​まし​た。でも​それ​だけ​で​なく,ヨセフ​の​優しい​手​が​自分​や​母親,また​弟​や​妹​を​かわいがり​慰め​て​くれる​こと​も​知っ​た​の​です。ヨセフ​と​マリア​の​家族​は​増え​て​ゆき,やがて​イエス​の​ほか​に​少なく​と​も​6​人​ の​子ども​が​生ま​れ​ます。(マタ 13:55,56)ヨセフ​は​家族​全員​を​顧み​て​養っ​て​ゆく​ため​に,ますます​懸命​に​働く​必要​が​あり​まし​た。

ヨセフ​は,家族​の​霊的​な​必要​を​顧みる​こと​が​最も​大切​で​ある,と​理解​し​て​い​た

19. ヨセフ​は,どの​よう​に​し​て​家族​の​霊的​な​必要​を​顧み​まし​た​か。

19 しかし​ヨセフ​は,家族​の​霊的​な​必要​を​顧みる​こと​が​最も​大切​で​ある,と​理解​し​て​い​まし​た。それで,時間​を​取っ​て​子ども​たち​に​エホバ​神​と​その​律法​に​つい​て​教え​ます。ヨセフ​と​マリア​は​子ども​たち​を​いつも​地元​の​会堂​に​連れ​て​行き,そこで​律法​の​朗読​と​説明​を​聞き​まし​た。もしか​し​たら​ヨセフ​は,あと​で​少年​イエス​から​いろいろ​質問​され,イエス​の​霊的​食欲​を​満たそ​う​と​懸命​に​努力​し​た​か​も​しれ​ませ​ん。ヨセフ​は​家族​を​エルサレム​で​の​宗教​上​の​祭り​に​も​連れ​て​行き​ます。年​に​一度​の​過ぎ越し​の​時​に​は,約​120​㌔​の​旅​を​し​て​祭り​に​出席​し,再び​家​に​帰っ​て​来る​まで​に,2​週​間​は​かかっ​た​こと​でしょ​う。

ヨセフ​は​崇拝​の​ため​に​家族​を​定期​的​に​エルサレム​の​神殿​に​連れ​て​行っ​た

20. クリスチャン​の​家族​の​頭​は,ヨセフ​の​残し​た​型​に​どの​よう​に​倣え​ます​か。

20 今日,クリスチャン​の​家族​の​頭​は​同じ​型​に​倣い​ます。子ども​の​ため​に​自分​を​与え,物質​的​安楽​や​他​の​どんな​事柄​より​も​霊的​訓練​を​優先​し​ます。家族​の​崇拝​を​司会​し​たり,集会​や​大会​に​子ども​を​連れ​て​行っ​たり​する​ため​に,どんな​苦労​も​いとい​ませ​ん。ヨセフ​と​同じく,それ​が​子ども​の​ため​に​行なえる​最良​の​投資​で​ある​こと​を​知っ​て​いる​の​です。

「痛む​思い​を​し​ながら」

21. ヨセフ​の​家族​は​過ぎ越し​の​時期​に​どんな​こと​を​し​まし​た​か。ヨセフ​と​マリア​は,イエス​が​い​ない​こと​に​いつ​気づき​まし​た​か。

21 イエス​が​12​歳​の​時,ヨセフ​は​いつも​の​よう​に​家族​を​連れ​て​エルサレム​へ​向かい​ます。それ​は​過ぎ越し​の​祭り​の​時期​でし​た。幾つ​も​の​家族​が​一緒​に,青々​と​し​た​春​の​田園​地帯​を​旅し​ます。だんだん​緑​が​少なく​なり,高地​に​ある​エルサレム​に​近づく​と,よく​知ら​れ​た「詩編」の“登っ​て​行く​とき​の​歌”を​歌っ​た​こと​でしょ​う。(詩 120‐134)エルサレム​は​何十万​も​の​人​で​混雑​し​て​い​た​に​違いあり​ませ​ん。祭り​が​終わる​と,多く​の​家族​が​再び​集団​で​帰路​に​就き​ます。ヨセフ​と​マリア​は,いろいろ​用事​が​あっ​た​の​か,イエス​が​親族​など​他​の​人​たち​と​一緒​に​いる​もの​と​思っ​て​い​まし​た。しかし,エルサレム​を​出​て​丸​一​日​たっ​て​から,ぞっ​と​する​よう​な​事実​に​気づき​ます。イエス​が​い​ない​の​です。―ルカ 2:41‐44

22,23. ヨセフ​と​マリア​は,イエス​が​い​ない​こと​を​知っ​て​どう​し​まし​た​か。ついに​イエス​を​見つけ​た​時,マリア​は​何​と​言い​まし​た​か。

22 ヨセフ​と​マリア​は​必死​の​思い​で​エルサレム​に​引き返し​ます。想像​し​て​ み​て​ください。息子​の​名​を​呼び​ながら​通り​を​行っ​たり​来​たり​する​二​人​に​とっ​て,そこ​は,がらん​と​し​た​見知ら​ぬ​街​の​よう​に​思え​た​こと​でしょ​う。あの​子​は​いったい​どこ​へ​行っ​て​しまっ​た​の​でしょ​う​か。捜し回っ​て​3​日​目​に​なり​ます。エホバ​神​の​聖​なる​子​を​世話​する​面​で​大​失敗​を​し​た,と​ヨセフ​は​感じ​て​い​た​か​も​しれ​ませ​ん。最後​に​二​人​は​神殿​に​行き​ます。イエス​を​捜し​て​いる​うち​に​一つ​の​広間​に​差しかかり​ます。そこ​で​は​律法​に​通じ​た​人​たち​が​集まっ​て​い​て,その​真ん中​に,なんと​少年​イエス​が​座っ​て​いる​では​あり​ませ​ん​か。ヨセフ​と​マリア​は​胸​を​なで下ろし​ます。―ルカ 2:45,46

23 イエス​は,その​人​たち​の​話す​こと​を​聴い​たり,熱心​に​質問​し​たり​し​て​い​ます。彼ら​は​イエス​の​理解​力​と​答え​に​驚き惑っ​て​い​まし​た。マリア​と​ヨセフ​は​ ショック​を​受け​ます。ヨセフ​の​言葉​は​聖書​に​記さ​れ​て​い​ませ​ん​が,マリア​の​言葉​に​は​二​人​の​気持ち​が​よく​表われ​て​い​ます。「子供​よ,どうして​こんな​こと​を​し​て​くれ​た​の​です。ご覧​なさい,父上​と​わたし​は​痛む​思い​を​し​ながら​あなた​を​捜し​て​い​た​の​です」。―ルカ 2:47,48

24. 聖書​に​は,親​の​直面​する​どんな​現実​が​描か​れ​て​い​ます​か。

24 この​エピソード​に​は,親​の​直面​する​現実​が​ありあり​と​描か​れ​て​い​ます。子育て​に​は​ストレス​が​伴い​ます。子ども​が​完全​で​も​そう​だっ​た​の​です。今日​の​危険​な​世​の​中​で​子ども​を​育て​て​いる​と,言う​に​言え​ない「痛む​思い」を​する​場合​が​あり​ます。しかし,親​の​直面​する​問題​が​聖書​に​描か​れ​て​いる​こと​を​知る​と,慰め​を​得​られる​でしょ​う。

25,26. イエス​は​両親​に​何​と​答え​まし​た​か。その​答え​を​聞い​た​ヨセフ​は,どう​感じ​た​か​も​しれ​ませ​ん​か。

 25 イエス​は,天​の​父​エホバ​を​他​の​どこ​より​も​身近​に​感じ​られる​場所​に​い​て,学べる​事柄​を​何​で​も​意欲​的​に​取り入れ​て​い​まし​た。イエス​は​全く​誠実​に​こう​答え​ます。「なぜ​私​を​捜さ​なけれ​ば​なら​なかっ​た​の​です​か。私​が​自分​の​父​の​家​に​いる​はず​の​こと​を​ご存じ​で​は​なかっ​た​の​です​か」。―ルカ 2:49

26 この​言葉​を​ヨセフ​は​幾​度​も​思い巡らし​た​に​違いあり​ませ​ん。そして​誇らしい​気持ち​に​なっ​た​こと​でしょ​う。エホバ​神​を​父​と​し​て​慕う​よう,イエス​を​勤勉​に​教え​て​き​た​から​です。少年​イエス​は​その​ころ​すでに,「父」と​いう​語​に​温かい​感情​を​抱い​て​い​まし​た。その​感情​は​おもに,ヨセフ​と​過ごし​て​き​た​年月​の​中​で​育ま​れ​た​の​でしょ​う。

27. 父親​に​は​どんな​素晴らしい​機会​が​あり​ます​か。ヨセフ​の​模範​を​思い出す​と​よい​の​は​なぜ​です​か。

27 あなた​は​父親​です​か。もし​そう​なら,素晴らしい​機会​が​あり​ます。父親​と​は​愛し​守っ​て​くれる​存在​だ,と​いう​意識​を​育む​よう​子ども​を​助ける​こと​が​できる​の​です。また,血​の​つながっ​て​い​ない​子ども​が​いる​なら,ヨセフ​の​模範​を​思い出し,その​一人一人​を​かけがえ​の​ない​大切​な​存在​と​見​て​接し​て​ください。天​の​父​エホバ​神​に​いっそう​近づく​よう​に​助け​ましょ​う。―エフェソス 6:4を​読む。

ヨセフ​は​忠実​に​務め​を​果たし​た

28,29. (イ)ルカ 2​章​51,52​節​の​言葉​から,ヨセフ​に​つい​て​何​が​読み取れ​ます​か。(ロ)ヨセフ​は,息子​が​知恵​に​おい​て​進歩​し​て​ゆく​点​で​どんな​役割​を​果たし​まし​た​か。

28 ヨセフ​に​間接​的​に​言及​する​数​少ない​記述​も,注意深く​調べる​に​値し​ます。例えば,イエス​が「引き続き​彼ら​に」つまり​両親​に「服し​て​おら​れ​た」と​あり​ます。さらに,「イエス​は,知恵​に​おい​て​も,身体​的​な​成長​に​おい​て​も,また​神​と​人​から​の​恵み​の​点​で​も​さらに​進ん​で​いっ​た」と​も​記さ​れ​て​い​ます。ルカ 2:51,52を​読む。この​言葉​から,ヨセフ​に​つい​て​ 何​が​読み取れる​でしょ​う​か。一つ​と​し​て,ヨセフ​が​家族​内​で​頭​と​し​て​の​務め​を​果たし​続け​て​い​た,と​いう​こと​です。そう​言える​の​は,完全​な​人間​で​ある​息子​が​その​権威​に​敬意​を​払い,服し​て​い​た​から​です。

29 また,イエス​が​知恵​に​おい​て​進歩​し​て​いっ​た​こと​も​分かり​ます。その​面​で​の​進歩​に,ヨセフ​は​大きく​貢献​し​た​に​違いあり​ませ​ん。当時​の​ユダヤ​人​の​間​で​知ら​れ​て​い​た​一つ​の​格言​が​あり​ます。それ​は​今​も​残っ​て​い​て​読む​こと​が​でき​ます。その​言葉​に​よる​と,真に​賢く​なれる​の​は​余暇​の​ある​人​だけ​で,大工​や​農夫​や​鍛冶​屋​など​の​職人​は「公正​や​裁き​を​論じる​こと​が​でき​ず,例え​話​が​語ら​れる​所​に​いる​こと​も​ない」と​され​て​い​ます。しかし​イエス​は,その​格言​が​意味​を​なさ​ない​こと​を​明らか​に​し​まし​た。イエス​は​少年​時代​に,一介​の​大工​に​過ぎ​ない​ヨセフ​が​エホバ​の「公正​や​裁き」に​つい​て​上手​に​教える​の​を​たびたび​聞い​て​い​た​に​違いあり​ませ​ん。その​よう​な​機会​は​たくさん​あっ​た​こと​でしょ​う。

30. ヨセフ​は​家族​の​頭​に​どんな​模範​を​残し​まし​た​か。

30 イエス​の​身体​的​な​成長​に​も​ヨセフ​の​影響​が​うかがえ​ます。少年​イエス​は​良い​世話​を​受け,強く​て​健康​な​大人​へ​と​成長​し​まし​た。さらに,ヨセフ​は​息子​が​肉体​労働​で​ある​大工​の​仕事​に​熟達​する​よう​訓練​し​まし​た。イエス​は​大工​の​息子​と​し​て​だけ​で​なく,「大工」と​し​て​も​知ら​れ​て​い​まし​た。(マル 6:3)ですから,ヨセフ​の​訓練​は​功​を​奏し​た​の​です。家族​の​頭​が​ヨセフ​に​倣っ​て,子ども​の​生活​面​で​の​福祉​に​気​を​配り,自活​できる​よう​に​助ける​の​は,賢明​な​こと​です。

31. (イ)証拠​から​する​と,ヨセフ​が​亡くなっ​た​時期​に​つい​て​どんな​こと​が​分かり​ます​か。( 囲みを​含む。)(ロ)ヨセフ​は,わたしたち​が​倣える​どんな​模範​を​残し​て​い​ます​か。

31 聖書​に​は,イエス​が​およそ​30​歳​の​時​に​バプテスマ​を​受け​た,と​記さ​れ​て​い​ます。その​時点​で,ヨセフ​に​つい​て​は​もう​言及​さ​れ​て​い​ませ​ん。証拠​から​する​と,イエス​が​宣教​奉仕​を​始め​た​時,マリア​は​すでに​やもめ​に​なっ​て​い​た​よう​です。(「 ヨセフ​は​いつ​死ん​だ​の​か」と​いう​囲み​を​参照。)と​は​いえ​ヨセフ​は,父親​と​し​て​優れ​た​模範​を​残し​て​い​ます。自分​の​家族​を​守り,養い,最後​まで​忠実​に​務め​を​果たし​た​の​です。父親​で​あれ,家族​の​頭​で​あれ,すべて​の​クリスチャン​が​ヨセフ​の​信仰​に​倣う​の​は​よい​こと​です。

^ 4節 当時,婚約​は​結婚​と​ほぼ​同じ​よう​に​みなさ​れ​て​い​まし​た。

^ 8節 この“星”は​自然​の​天文​現象​で​も,神​の​差し向け​た​もの​で​も​あり​ませ​ん。サタン​が​その​よう​に​超​自然​的​な​もの​を​見せ​て,イエス​を​滅ぼす​と​いう​邪悪​な​たくらみ​を​遂げ​よう​と​し​て​い​た​こと​は​明らか​です。

^ 11節 聖書​が​はっきり​示し​て​いる​とおり,イエス​が「自分​の​しるし​の​始め」すなわち​最初​の​奇跡​を​行なっ​た​の​は,バプテスマ​を​受け​た​後​の​こと​でし​た。―ヨハ 2:1‐11