科か学がく者しゃたちの考かんがえ: 生せい物ぶつ学がく者しゃなどの多おおくの科か学がく者しゃたちは，DNAやそれに含ふくまれている“設せっ計けい図ず”は長ながい年ねん月げつをかけて偶ぐう然ぜんに出で来き上あがった，と考かんがえています。DNAの分ぶん子し構こう造ぞうにも，DNAが保ほ持じし伝でん達たつする情じょう報ほうにも，DNAの機き能のうにも，設せっ計けいされた証しょう拠こは全まったく見みられない，と言いいます。¹⁷

聖せい書しょにはどんなことが書かかれているか: 聖せい書しょによると，人じん体たいの各かく部ぶの形けい成せいとそのタイミングについての情じょう報ほうが，神かみの“書しょ”に書かかれています。ダビデという王おう様さまは，聖せいなる力ちからに導みちびかれて，神かみにこう言いいました。「あなたの目めは胎たい児じの私わたしを見みました。私わたしのあらゆる部ぶ分ぶんがあなたの書しょに書かかれました。それらが形かたち作づくられる日ひ々びのことが，まだどの部ぶ分ぶんもできていない時ときに書かかれました」。（詩し編へん 139:16）

これまでに明あきらかになっていること: もし進しん化かが事じ実じつなら，DNAが偶ぐう然ぜんの連れん続ぞくによって生しょうじたと考かんがえられる根こん拠きょが幾いくらかはあるはずです。一いっ方ぽう，もし聖せい書しょに書かかれていることが事じ実じつなら，DNAが高たかい知ち能のうを持もつ方かたによって造つくられた証しょう拠こがあるはずです。

DNAの見み事ごとな仕し組くみは，身み近ぢかな物ものに置おき換かえて考かんがえると理り解かいしやすくなります。では，もう一いち度ど，細さい胞ぼう内ないの“見けん学がく”に出で掛かけましょう。今こん回かい見けん学がくするのは，ヒトの細さい胞ぼうについて学まなべる博はく物ぶつ館かん です。建たて物もの全ぜん体たいがヒトの代だい表ひょう的てきな細さい胞ぼうの模も型けいになっています。大おおきさは実じっ際さいの細さい胞ぼうの1300万まん倍ばいで，7万まん人にんを収しゅう容ようできる大おお型がたスポーツ競きょう技ぎ場じょう並なみです。

博はく物ぶつ館かんの中なかに入はいって，まず目めを奪うばわれるのは，たくさんの奇き妙みょうな物ぶっ体たいです。中ちゅう央おうには球きゅう形けいの核かくがあり，高たかさは20階かい建だての建たて物ものほどです。では，核かくの中なかに入はいってみましょう。

核かくの外がい壁へき，つまり核かく膜まくにあるドアを通とおって中なかに入はいると，その空くう間かんは46本ぽんの染せん色しょく体たいでいっぱいです。基き本ほん的てきに同おなじものが対ついになっていて，高たかさはさまざまですが，一いち番ばん近ちかくにあるのは12階かい建だての建たて物ものほどです（1）。各かく染せん色しょく体たいは中ちゅう央おうがくびれていて，つながったソーセージのようです。でも，太ふとさは巨きょ木ぼくの幹みきぐらいあります。染せん色しょく体たいには不ふ規き則そくにたくさんの横よこ筋すじが入はいっています。近ちかくに寄よって見みると，それぞれの筋すじに縦たて線せんがあり，縦たて線せんの間あいだにはまた横よこ線せんが入はいっています（2）。本ほんが積つまれているのでしょうか。そうではありません。らせん状じょうにきつく巻まかれた輪わの外そと側がわがそのように見みえるのです。1つの輪わを引ひっ張ぱってみると，手て前まえに出でてきます。よく見みるとその輪わは，整せい然ぜんと並ならんだたくさんの小ちいさなコイルでできています（3）。そのコイル状じょうのものを構こう成せいしているのは，長ながいロープのようなものです。これが一いち番ばん大だい事じなもののようです。いったい何なんでしょうか。

染せん色しょく体たいの模も型けいのこの部ぶ分ぶんをロープと呼よぶことにしましょう。太ふとさは2.5㌢ほどです。リールにきつく巻まかれていて（4），それがさらにぐるぐると巻まかれてコイルのようになっています。それらのコイルは足あし場ばのような物ものにくっついているので，あるべき場ば所しょに保たもたれます。そばにあるパネルの説せつ明めいによると，このロープは非ひ常じょうに効こう率りつよく収しゅう納のうされているとのことです。染せん色しょく体たいの模も型けい全すべてからロープをほどいて伸のばすと，地ち球きゅうを半はん周しゅうするほどの長ながさになるのです。 a

ある科か学がく書しょは，効こう率りつの良よいこの収しゅう納のうシステムを「工こう学がく技ぎ術じゅつの偉い業ぎょう」と評ひょう価かしています。¹⁸ では，この偉い業ぎょうにどんな技ぎ術じゅつ者しゃも関かかわっていない，と考かんがえるのは筋すじの通とおったことでしょうか。もしこの博はく物ぶつ館かんの中なかに，何なん百びゃく万まん点てんもの商しょう品ひんをきれいに陳ちん列れつした大おおきな店みせがあり，欲ほしい物ものを簡かん単たんに見みつけられるとしたら，そうした店みせがひとりでにできたと考かんがえるでしょうか。もちろん，そうは考かんがえないでしょう。では，そのような店みせよりはるかに収しゅう納のう効こう率りつが優すぐれている細さい胞ぼうについてはどうでしょうか。

近ちかくのパネルに，「ロープを手てに取とってご覧らんください」 と書かかれています。手てのひらに載のせて見みてみると（5），これが普ふ通つうのロープではないことに気き付づきます。2本ほんのひもが，らせん状じょうに絡からみ合あっています。その2本ほんのひもは，等とう間かん隔かくにある小ちいさな棒ぼうでつながっています。ねじれたはしごのようになっていて，らせん階かい段だんに似にています（6）。これこそが，生せい命めいの神しん秘ぴともいうべきDNA分ぶん子しです。

1つのDNA分ぶん子しがリールや足あし場ばによってきれいにまとめられ，1本ぽんの染せん色しょく体たいになっていたわけです。はしごの横よこ木ぎは，塩えん基き対つい（7）と呼よばれています。それにはどんな役やく目めがあるのでしょうか。全ぜん体たいとしてどんな働はたらきをしているのでしょうか。パネルに簡かん単たんな説せつ明めいがあります。見みてみましょう。

パネルによれば，DNAを理り解かいする鍵かぎは，はしごの横よこ木ぎにあります。はしごを縦たてに割わったとしましょう。はしごの縦たて木ぎそれぞれから横よこ木ぎの半はん分ぶんが突つき出でています。横よこ木ぎの部ぶ品ひんは4種しゅ類るいしかなく，科か学がく者しゃたちはそれを，A，T，G，Cと呼よんでいます。それら4つの“文も字じ”がさまざまな配はい列れつで並ならび，暗あん号ごう化かされた情じょう報ほうになっています。

19世せい紀きに発はつ明めいされたモールス符ふ号ごうをご存ぞんじかもしれません。モールス符ふ号ごうは，電でん信しんなどによるやりとりで使し用ようされます。モールス符ふ号ごうで使つかう“文も字じ”は，点てん（･）と線せん（–）の2つだけです。それでも，無む数すうの単たん語ごや文ぶんを作つくり出だせます。一いっ方ぽう， DNAの暗あん号ごうに使つかわれているのは4文も字じです。A，T，G，Cの配はい列れつの違ちがいによって，コドンと呼よばれるさまざまな“単たん語ご”が作つくられます。コドンが連つらなると，遺い伝でん子しという“文ぶん章しょう”になります。遺い伝でん子し1つは，平へい均きんして2万まん7000文も字じから成なっています。遺い伝でん子し部ぶ分ぶんとそうでない長ながい部ぶ分ぶんが交こう互ごにつながって，染せん色しょく体たいという“章しょう”が出で来き上あがります。そして23の染せん色しょく体たいが，ゲノムという“本ほん”，つまりヒトの全ぜん遺い伝でん情じょう報ほうを形けい成せいします。 b

ゲノムは巨きょ大だいな本ほんに例たとえられます。どれほどの情じょう報ほうが収おさめられているのでしょうか。ヒトのゲノムは合ごう計けい30億おくほどの塩えん基き対つい（DNAのはしごの横よこ木ぎ）で成なっています。¹⁹ 百ひゃっ科か事じ典てんの中なかには1巻かんが1000ページを超こえるものがありますが，ゲノムの情じょう報ほうを書かき出だそうとすると，そうした百ひゃっ科か事じ典てん428巻かん分ぶんになります。各かく細さい胞ぼう内ないにあるゲノムのもう1つのセットを合あわせると，856巻かんになります。このゲノム百ひゃっ科か事じ典てん全ぜん巻かんをタイピングするとしたら，1日にち8時じ間かん，週しゅう5日か，休きゅう暇かなしで働はたらいても，80年ねんかかるほどの情じょう報ほう量りょうです。

たとえ全ぜん部ぶを入にゅう力りょくし終おえたとしても，出で来き上あがった事じ典てんはそのままでは人じん体たいの役やくには立たちません。その事じ典てんの何なん百びゃっ巻かん分ぶんもの情じょう報ほうを，100兆ちょう個こもある非ひ常じょうに小ちいさな細さい胞ぼうの一ひとつ一ひとつに収おさめなければならないからです。人にん間げんの技ぎ術じゅつでは，それほどの情じょう報ほうをそこまでコンパクトに収おさめることはとてもできません。

分ぶん子し生せい物ぶつ学がくとコンピューター科か学がくの一いち教きょう授じゅはこう言いっています。「乾かん燥そうさせると1立りっ方ぽう㌢ほどの体たい積せきになるDNA1㌘には，CD約やく1兆ちょう枚まい分ぶんの情じょう報ほうを記き録ろくできる」。²⁰ これはどれほどすごいことなのでしょうか。すでに考かんがえたように，DNAには，遺い伝でん子しつまり人じん体たいの設せっ計けい図ずが含ふくまれており，各かく細さい胞ぼうに同おなじ完かん全ぜんな設せっ計けい図ずが入はいっています。では，ティースプーン1杯ぱいのDNAには，何なん人にん分ぶんの設せっ計けい図ずを収おさめられるでしょうか。なんと現げん在ざいの世せ界かい人じん口こうの約やく310倍ばい分ぶんです。世せ界かいの80億おく人にん分ぶんの設せっ計けい図ずなら，ティースプーンの表ひょう面めんを薄うすく覆おおう分ぶんだけで十じゅう分ぶんなのです。²¹

記き憶おく媒ばい体たいの小こ型がた化かが進すすんだ今いまでも，人にん間げんの作つくった製せい品ひんで，これほどの容よう量りょうのものはありません。では，人にん間げんが作つくったCDについて考かんがえてみましょう。CDの造つくりは実じつに見み事ごとです。形かたちは左さ右ゆう対たい称しょうで，表ひょう面めんには光こう沢たくがあり，デザインに無む駄だがありません。頭あたまのいい人ひとが作つくったことは明あきらかです。そのCDに，無む意い味みな情じょう報ほうではなく，複ふく雑ざつな機き械かいの製せい作さく，メンテナンス，修しゅう理りの手て順じゅんについての明めい快かいで詳しょう細さいな指し示じが記き録ろくされているとします。書かき込こまれている情じょう報ほうは，CDの重おもさや大おおきさには影えい響きょうしませんが，そうした情じょう報ほうがあってこそCDは価か値ちを持もちます。情じょう報ほうが収おさめられているなら，当とう然ぜん誰だれか知ち性せいのある人ひとが元もとの 情じょう報ほうを書かいたはずではないでしょうか。

DNAをCDや本ほんに例たとえるのは，こじつけではありません。ゲノムに関かんするある本ほんにはこう書かかれています。「ゲノムを一いっ冊さつの本ほんに見み立たてるという概がい念ねんは，実じつを言いうと単たんなる比ひ喩ゆではない。まさしくその通とおりなのだ。一いっ冊さつの本ほんは，ひとまとまりのデジタル情じょう報ほうと言いえる。……ゲノムもまたそうだ」。こうも書かかれています。「ゲノムは素す晴ばらしく利り口こうな本ほんで，条じょう件けんさえ整ととのえば，みずからを複ふく写しゃしたり読よみ取とったりできる」。²² では，DNAが自みずからをコピーしたり読よみ取とったりするとはどういうことか見みていきましょう。

静しずかな博はく物ぶつ館かんを見けん学がくしながら，1つ疑ぎ問もんが湧わきます。実じっ際さいの細さい胞ぼう核かくは，この模も型けいのようにじっと静せい止ししているのでしょうか。ふと見みると，別べつの展てん示じ物ぶつがあります。ガラスのショーケースにDNAの模も型けいの一いち部ぶが入はいっていて，その上うえに「ボタンを押おしてください」と書かかれています。ボタンを押おすと，音おん声せいガイドが流ながれます。「DNAが行おこなう大たい切せつな仕し事ごとを2つご紹しょう介かいします。1つ目めは複ふく製せいです。DNAは，新あたらしい細さい胞ぼうに1そろいの遺い伝でん情じょう報ほうが含ふくまれるようにするため，コピーされる必ひつ要ようがあります。それがどのように行おこなわれるかご覧らんください」。

展てん示じ物ぶつの端はしの扉とびらから，いかにも複ふく雑ざつそうな機き械かいが現あらわれます。幾いくつものロボットが組くみ合あわさった機き械かいです。DNAに近ちかづいて密みっ着ちゃくし，線せん路ろの上うえを走はしる列れっ車しゃのように，DNAに沿そって動うごきます。速はや過すぎて何なにをしているのかよく分わかりませんが，機き械かいの後うしろから，元もと々もとは1本ぽんだったDNAのロープが2本ほんに増ふえて出でてきているのが見みえます。

音おん声せいガイドが流ながれます。「これは，DNAの複ふく製せいの様よう子すをごく簡かん単たんに再さい現げんしたものです。酵こう素そ と呼よばれる機き械かいのような分ぶん子しが幾いくつも，DNAに沿そって移い動どうします。まず，DNAを2本ほんのひもに分わけ，それぞれのひもを鋳い型がたとして，それと対ついになる新あらたなひもを作つくり出だします。全すべてをお見みせすることはできませんが，ほかにもいろいろなものが関かかわっています。例たとえば，複ふく製せい機き械かいの前まえを行いき，DNAの片かた方ほうのひもを切せつ断だんして，DNAのねじれを緩ゆるめる小ちいさな装そう置ちがあります。また，DNAの“校こう正せい”も何なん度どか行おこなわれます。驚きょう異い的てきな正せい確かくさで，誤あやまりを発はっ見けんし，修しゅう正せいします」。（ 16-17ページの図ずをご覧らんください。）

音おん声せいガイドが続つづきます。「作さ業ぎょう速そく度どはお分わかりいただけると思おもいます。ロボットはかなりのスピードで動うごいています。実じっ際さいの酵こう素そは，DNAの“線せん路ろ”に沿そって，1秒びょうで100の横よこ木ぎつまり塩えん基き対ついを通とおり過すぎます。²³ 鉄てつ道どうの線せん路ろの大おおきさまで拡かく大だいすると，この酵こう素その“機き関かん車しゃ”は時じ速そく80㌔以い上じょうで疾しっ走そうしていることになります。細さい菌きんの中なかでは，酵こう素そはその10倍ばいもの速そく度どで動うごきます。ヒトの細さい胞ぼうでは，そうした何なん百びゃくもの複ふく製せい機き械かいがDNAの“線せん路ろ”のあちこちで働はたらき，ゲノム全ぜん体たいのコピーをわずか8時じ間かんでやってのけます」。²⁴ （20ページの「 読よんでコピーできる分ぶん子し」という囲かこみをご覧らんください。）

DNAの複ふく製せい機き械かいが退たい場じょうし，別べつの機き械かいが現あらわれます。これもDNAに沿そって動うごきますが，前まえの機き械かいよりもゆっくりです。DNAのロープが機き械かいの中なかに取とり込こまれていき，そのままの姿すがたで反はん対たい側がわから出でてきます。でも，機き械かいの別べつの所ところから1本ぽんの新あたらしいひもが出でてきていて，しっぽが伸のびているかのようです。何なにが起おこっているのでしょう。

再ふたたび音おん声せいガイドが流ながれます。「DNAの2つ目めの仕し事ごとは転てん写しゃです。DNAは安あん全ぜんな細さい胞ぼう核かくの外そとに出でることはありません。では，人じん体たいを構こう成せいする全ぜんタンパク質しつの“レシピ”である遺い伝でん子しは，どうやって読よみ取とられ，細さい胞ぼう核かくの外そとで使つかわれるのでしょうか。そこで活かつ躍やくするのがこの機き械かいです。この酵こう素そはまず，DNAの特とく定ていの場ば所しょを見みつけます。そこには，細さい胞ぼう核かくの外そとから来くる化か学がく的てきな信しん号ごうによってスイッチがオンになった遺い伝でん子しがあります。この酵こう素そは次つぎに，その遺い伝でん子しをコピーし，RNA（リボ核かく酸さん）と呼よばれる分ぶん子しを作つくり出だします。RNAは一いっ見けん，DNAの片かた方ほうのひもに似にていますが，実じっ際さいは違ちがいます。遺い伝でん子し内ないの暗あん号ごう化かされた情じょう報ほうが転てん写しゃされたものです。酵こう素そ内ないで合ごう成せいされたRNAは，細さい胞ぼう核かくを出でてリボソームに情じょう報ほうを運はこびます。そしてリボソームでその情じょう報ほうを使つかってタンパク質しつが作つくられます」。

こうした模も型けいがあれば，思おもわず見み入いってしまう でしょう。この博はく物ぶつ館かんの素す晴ばらしさに感かん心しんし，いろいろな展てん示じ物ぶつや機き械かいを設せっ計けいして作つくった人ひとたちは本ほん当とうにすごいと思おもうに違ちがいありません。では，もしこの博はく物ぶつ館かん全ぜん体たいが動うごき出だし，ヒトの細さい胞ぼう内ないで同どう時じに起おきている無む数すうのことが全すべて再さい現げんされるとしたら，どうでしょうか。それはきっと大だい迫はく力りょくで，見みる人ひとを圧あっ倒とうすることでしょう。

博はく物ぶつ館かんで見みたいろいろなことが，あなたの体からだの100兆ちょうもの細さい胞ぼうの中なかで，今いまこの瞬しゅん間かんも，小ちいさくて複ふく雑ざつなたくさんの“機き械かい”によって実じっ際さいに行おこなわれているのです。DNAが読よみ取とられて，人じん体たいを構こう成せいするおよそ10万まん種しゅ類るいのタンパク質しつを合ごう成せいするための指し示じが送おくられています。また，DNAがコピーされて校こう正せいされ，出で来き上あがった指し示じ書しょが新あたらしい細さい胞ぼう内ないに組くみ込こまれています。

では，もう一いち度ど，「こうした“設せっ計けい図ず”全すべてはどこから来きたのだろう」と考かんがえてみましょう。聖せい書しょによると，この“本ほん”は人にん間げんより優すぐれた方かたによって書かかれました。それは本ほん当とうに時じ代だい遅おくれで非ひ科か学がく的てきな考かんがえなのでしょうか。

 次つぎのことを考かんがえてみてください。たった今いま見けん学がくしたような博はく物ぶつ館かんを，人にん間げんは造つくれるでしょうか。造つくろうとしても，大おおきな壁かべにぶつかるでしょう。ヒトゲノムやその機き能のうについては，まだあまりよく分わかっていません。科か学がく者しゃたちは今いまも，全すべての遺い伝でん子しがどこにあり，どんな働はたらきをするかを解かい明めいしようと奮ふん闘とうしています。その上うえ，DNAのロープの中なかで遺い伝でん子しである部ぶ分ぶんは，全ぜん体たいのごく一いち部ぶにすぎません。遺い伝でん子しではない，ほかの大だい部ぶ分ぶんは何なんなのでしょうか。科か学がく者しゃたちはその部ぶ分ぶんをジャンク（がらくた）DNAと呼よんでいましたが，最さい近きんになってその見み方かたを改あらためました。その部ぶ分ぶんにより，遺い伝でん子しがどのように，またどの程てい度ど使し用ようされるかがコントロールされている，と考かんがえるようになっています。たとえこれから解かい明めいが進すすんで，科か学がく者しゃがDNA全ぜん体たいの模も型けいと，コピーや校こう正せいを行おこなう機き械かいを作つくり上あげることができたとしても，実じつ物ぶつの機き能のうや動うごきを完かん璧ぺきに再さい現げんすることなどできないでしょう。

 有ゆう名めいな科か学がく者しゃリチャード･ファインマンは，亡なくなる少すこし前まえに黒こく板ばんにこう書かきました。「私わたしは自じ分ぶんに作つくれないものは理り解かいできない」。²⁵ 謙けん虚きょで率そっ直ちょくなコメントであり，まさにDNAについても当あてはまります。科か学がく者しゃたちはDNAも，それを複ふく製せいする酵こう素そも転てん写しゃする酵こう素そも作つくれません。DNAについて十じゅう分ぶんに理り解かいすることもできていません。それなのに，偶ぐう然ぜんが重かさなって何なにもかもが自し然ぜんに生しょうじたに違ちがいない，と言いう人ひとたちがいます。これまで考かんがえてきたことからすると，その見み方かたは本ほん当とうに筋すじが通とおっていると思おもいますか。

証しょう拠こからして偶ぐう然ぜんとは考かんがえにくい，と言いう有ゆう識しき者しゃたちもいます。例たとえば，DNAの二に重じゅうらせん構こう造ぞうの発はっ見けんに貢こう献けんしたフランシス･クリックという科か学がく者しゃは，DNA分ぶん子しの構こう造ぞうはあまりにも見み事ごとなので，自し然ぜんに生しょうじたとは思おもえない，と言いいました。そして，知ち性せいを持もつ地ち球きゅう外がい生せい命めい体たいがDNAを地ち球きゅうに送おくり込こみ，生せい命めいの誕たん生じょうを助たすけた，という説せつを提てい唱しょうしました。²⁶

もっと最さい近きんでは，50年ねんにわたって無む神しん論ろんを唱となえてきた著ちょ名めいな哲てつ学がく者しゃアントニー･フルーが，考かんがえを180度ど変かえました。81歳さいの時ときに，生せい命めいは何なんらかの知ち性せいの働はたらきによって造つくられたのだろう，と言いうようになったのです。どうしてそう考かんがえるようになったかというと，DNAについて学まなんだからです。あなたの新あたらしい考かんがえは科か学がく者しゃたちには不ふ評ひょうでしょうね，と言いわれて，フルーはこう答こたえたとされています。「それは残ざん念ねんです。私わたしはこれまでずっと，どこに行いき着つこうとも証しょう拠こが導みちびく方ほうへ進すすむ，という……信しん念ねんに従したがって生いきてきました」。²⁷

どう思おもいますか: 証しょう拠こはどんな結けつ論ろんへと導みちびいているでしょうか。ある工こう場じょうの中なかのコンピューター室しつに入はいったとしましょう。コンピューターが，工こう場じょうの全ぜん工こう程ていを制せい御ぎょする複ふく雑ざつなメインプログラムを実じっ行こうしています。しかもそのプログラムは，工こう場じょう内ないの機き械かい全すべての製せい造ぞうやメンテナンスに関かんする指し示じを常つねに出だし，なおかつ自みずからをコピーし，校こう正せいしています。あなたはそれを見みて，そのコンピューターやプログラムはひとりでにできたに違ちがいないと思おもうでしょうか。それとも，頭あたまのいい誰だれかが作つくったのだろうと思おもうでしょうか。答こたえは明あきらかです。